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生活禄を使い切らなければならないルールは、それなりにストレスだった。そもそも富を溜め込むのが人類の習性であるのに、使い切れというのは、生理的に反していた。
‥かような意見が多数意見を占めた。
論の焦点になったのは、足が出ることは勿論認められないが、のりしろとして済ますことのできる枠をどの程度容認するかだった。
そこで、委員会が目を付けたのが労働分保証額と最低保障金額の二つをのりしろとした場合の、のりしろの幅の違いだった。
残金が、各々の労働分評価収入の金額幅で収まっていれば良しとすれば、労働分保証額の多い人ほど使い切りの条件を満たしやすいという見方が成り立った。
つまりこうなる。
残金のりしろ枠={最低保障額のみ}
残金のりしろ枠={労働分保証額+最低保障額}
労働分保証額が多い方が、使い切りの条件を満たしやすい。
> しかしである。まだまだ、労働意欲に繋げるには何かが足りなかった‥
仮に、最低保障金額を百万円程度で考えるならば、月額にして8万3千円程度である。家族構成等によっては、それだけで一年をやり過ごさなければならないとなれば、かなり厳しい金額だ。
それにしたとて、それはペナルティーの一年間だけの話である。
そしてそれは実質、無効にしてしまえる隠れ要素を含む。
それが、夫婦間で交互にやり繰りすることだ。
(※ 成人になれば、誰でも最低保障金額が保障され、生活禄の申請が可能になる。)
‥用は考え方次第で、夫を立てて夫名義で生活禄の増分を用立てた場合‥妻の持つ金額はそっくりそのまま、予備費用と見なすことが可能だ。いわゆる臍繰り感覚である。
早い話が、専業主婦のケースであれば、申請せずとも百万円、使っても使わなくても百万円を持っていられる勘定が成り立つ。無論、申請すれば、自分の小遣い程度は自由に小槌(こづち)ることが可能である。
ただし、それでも足を出してしまった場合はペナルティーの期間を二年としよう。
でないと公平にはならない。親権者が一人と二人のようなケースでは、条件の公平さに欠ける。そういう視点。裏技を使っても尚、足を出すようでは同じように扱うわけには行かないはずだ。
しかし、どちらにせよこれらペナルティーが下された場合、ズルズルと足を出し続けてしまう恐れもある。生活禄の暮らししか知らない世代ともなれば、それは十分にあり得るだろう。ならば行政は、該当家族に対して担当者を付けて、指導または相談をしていく必要が生ずる。
‥何分にも別れ話のきっかけにだってなりかねない。そしてそれの繰り返しでは意味が無いのだ。
追記