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父親が出かけたその日、少年は奇しくも家の主同然だった。
少なくとも、このとき11才の少年はそれを気取っていた。大胆にも家の財布を半分任された少年には、手渡された自分用の電帳カードを繰り返し眺めては、それを思った。
それはこの時代、大人になれば誰しもに訪れる出来事だったせいもあっただろう。
‥少年はその本質を肌で感じとっていた。
一方で、少年の父親にしても使い込まれてしまうような心配はあまりなかった。
なぜなら、事ある度に我が家の買い物に付き合わせ、また、我が子を買い物に走らせて来たその成果が今そこにあったからだ。
年末までに使い切りのラインに乗せれば良し。電帳カードに表示されていた金額は十分に思えた。それは、その時の少年にとって造作もないことだった。
‥それと、なぜ我が家の今年の家計予算額がいつもより多めだったのかの理解がそこにあった。
自分がうかつにも使い込んでしまい、父親の就職活動の身動きが取れなくなるようなヘマだけはするまいと、少年は心に決めていた。また、少年には、いつまでも飲んだくれだけの父親の息子のままに居たくないという気持ちがあった。
追記