1-1)1改稿.2015/02/13...20150212...
友達のツテを使って、智恵子は光太郎に会うことができた。
その光太郎が今自分の目の前にいた‥何から話をすべきだろうか、簡単な挨拶の時間はあっという間に過ぎ経た。そこに光太郎の方から智恵子にこう言葉が投げかけられて来た。
「長沼さんは、ボクとの出会いを何色に染めたいと思いますか?」
その質問はあまりにも唐突で、光太郎自身が、智恵子とのこれからの付き合いを前向きに受け止めているように思えた。そのときの智恵子には、平凡にもお決まりの色しか頭に浮かんで来なかった。
智恵子は、はにかみながらその色をそっと口にした。
「ピ‥ピンク‥です‥」
それを聞いた光太郎は、さもガッカリと言わんばかりに意見を述べたてた。
それは、芸術家の物の見方だった。
「残念だな、キミはいつもそんな色使いで画を描いているのかい
もっと大胆に、空五倍子(うつふし)色とか、ドブネズミ色とか、玉虫色とか、山吹色とか‥
そう‥出会いの先に何があるかなんて誰にもわからないものだよ。
真剣に物事を見つめるあまり、特定の色に染めたくなるのは、人の勝手というものだ。」
その言葉を聞いて智恵子は思った。この人は、恋の話をしようとしたのではなく、芸術の質問をしたのだと‥智恵子は、自分の光太郎に対する感情をどうしたいかなんて、光太郎に会うまでの間、それほど多くを望んではいなかった。
それでも、光太郎の論で迫ってきた質問は、
逆に、智恵子自身の光太郎への好奇心が、自分の内の芸術家として以外の処から発していたものだと気づかせた。それと同時に、光太郎の物事の全体像を余すことなく受け入れようとする芸術への強い感情に、智恵子はますます想いを募らせた。
でも、その時の智恵子には、
この出会いをピンク以外に他の色でうまく表現するだけのイメージが湧いてこなかった。
答えられずに間が流れるのを恥ずかしく思い始めると、智恵子にふと別の気持ちが湧いた。
智恵子は、逆に光太郎に質問していた。
「あのう‥」
「なんですか?」
「高村さんは、何色に染めたいんですか?」
その智恵子の質問に、
光太郎は智恵子に視線を向け直しながら、にこっと親指を立てるポーズを付けてこう言った。
「もち、ピンク、ピンク以外ありえねぇww」
智恵子はそれを聞いてふきだした。光太郎もその智恵子の屈託のない笑顔に誘われ大いに笑った。
↓/稚草を味わう/↓
posted by 木田舎滝ゆる里 at 17:09
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日記/2015
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