↓4)改稿.2016/05/03...20160324...
脇ばなしも一息ついて、蛍とれんげは、駄菓子選びに戻った。
凸激はというと、如何にも用ありげに、レジ前のスペースにそのまま突っ立っていた。
楓は、その凸激の買い物をする気のない様子を見て取ると、
こないだの凸激との初対面を思い出して尋ねたのだった。
「おい、とっつん」
「なに?楓姉」
「お前、あの二人に変なこと吹き込んでないだろうな?」
小声気味に話すその楓の言葉に、
凸激は、ここがチャンスとばかりに体をレジの方に向き直り、意気揚々に答えた。
「大丈夫でーす。楓姉はその席に安心して座っていてくださーい」
「なんだ、その妙にキュンとくるような台詞は、お前、何か下心あるだろう?」
「実は、
(そういいながら凸激は、まずズボンから百円玉を一枚取り出すと、レジの台に叩き付けた。)
(その後から、改めて手にしていたジャガイモの袋を楓の目の前に差し出すと、こう注文した。)
今食いたいから、この芋を蒸かして欲しいんだけど‥」
それを見て、楓は思った。思ったと言うより呆れた。
凸激は、駄菓子に関わらず怪しい甘味料を断固拒否していると言うことに。
そうなると、楓も商売上がったりだ。それで、こんな取引を持ちかけているのかと‥
勿論、楓としては、断る理由などまったくなかったが、どこか自分に情けなくも思えた。
‥とは言え、向こうがそれで好いというのなら、甘えて見るまでだった。
「一人で食うのか?」
楓がそう聞くと、凸激は歌で返した。
|ひとりでは周りの目が気になって おいしさ半減 分ければ倍増
「そんなの歌にして言わねぇで、ふつうに口で言えよ、
じゃ、ちょっと待ってろ、いま蒸かしてやるから」
楓はそう言うと、台所に向かうべく振り返ったが、
ふと気になって、足を止め、頭半分戻してこう訊いた。
「なぁ、レンジでチンでもいいか?」
「電子レンジ禁止でお願いしまーす」
「な、なんだよとっつん、お前のその性格はどこから来るんだ?」
「親ゆずりでーす。あと、味付けは塩で、よろしくお願いしまーす」
それを聞くと、楓もまんざらでもない様子で、ジャガイモをさげて奥に入っていった。
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