向宜詠吟.2021/02/17
その天使は孤独とした感情が不思議だった
そして、孤独の後に訪れる癒やしがお気に入りだった
だがその孤独も癒やしも次第に自分だけの枠に満足できなくなった
天使は次第に、他者の孤独とした感情に興味を抱き、それの成り行きを事細かに調べ始めた
それから、天使は自分に起きてきた癒やしこそ美学だと思うようになった
そしてお節介にも、他者にも我の美を与えんと思案するようになった
結果、その天使は芸術を創造した
できるだけ華やかに
できるだけ明るく
できるだけ喜ばしく
それは、ヒトとしての価値観を上書きせしめる勢いだった
そうで無いと言う事が、如何に非力で惨めで残念な有り様であるかを、裏返しで教え込んでいた
すると不思議なことに
ヒトは勝手に孤独を募らせて陰湿になった
耐えられぬ者らは、嫉み妬み怨みを募らせ
奪い合う事への正当性を賛美する始末だった
この結果に天使は閉口した
そして始めて気がついた
ヒトの孤独には、元から癒す力が無かったのだと
そして始めて自覚した
癒やしは自らに宿ってこそだということに
ヒトに教え込んた真善美とした芸術観はつまりとても稚拙だった
孤独も癒やしも何も、自分は唯ありのままを受け入れていただけだった
そこに価値観を持ち出した事自体が間違いだった
自分の孤独感と他者の孤独感には幾らかの違いがあり
それゆえに癒やし方にしても幾らかの違いがあってそれで良かった
そして、その天使は自分のやらかしてしまった事態に始めて気がついた
「私は何と愚かで非力だろう‥」
それからというもの、天使は唯、見守ると言う事だけに専念した
それからというもの、天使は常に誰かのために祈るようになった
「誰の孤独にも癒やしが宿りますように」
> うた詠み終わります、ありがとうございました。