2016年03月15日

【二次創作】のんのんびより 02 俺は夕向凸激の巻

↓3)改稿.2016/04/29...20160313...

 今日は進級始業式、そして転入初日‥凸激が旭丘分校に通う初日だった。

 見事な快晴の朝、
 早ばやとまだ誰も来ていない旭丘分校の校門に、
 夕向凸激(ゆうむかいとつげき)が姿を現した。
 凸激は、例の如く‥小五のくせにマイ中学教材を運ぶべくして、自転車で登校してきたのだ。
 さすがにランドセルには収まらず、荷を運ぶのにちゃっかりと自転車登校を試みたのである。

 以前の分校担任のアドバイスで、持ち運ぶのも大変だろうからと
 同じ中学参考書と問題集を二つ揃えて、一つは学校、一つは自宅に据え置くという作戦だ。
 そんな手があったのか‥と感心した凸激は、
 「じゃ、小学校の教科書も持ち運ぶ必要ないじゃん」と決めていた。
 なにしろ、凸激はすでに‥個人的には小学校課程を終えていた。

 その恩師との挑戦は、もはや凸激自身の目標になっていた。
 分校という環境を生かして、ちゃっかり小学校の内に中学課程を修了させようというのである。

 ちなみに、引っ越して新たに通うことになった‥ここ旭丘分校では中学校も一緒だった。
 それゆえ‥凸激の学習意欲には、半分やけくそさが入り交じっていた。
 恩師との挑戦を果たしたとしても、そこには同級生も部活動に励める仲間も得られず、
 ただ黙々と勉強せざるを得ずの道のりに、退屈さを募らせつついたからだ。


|校門に 男一匹影ぞ立つ 旭たくまし丘すがすがし


 「ちっ、少し早く来すぎたか‥
  暇だし‥もう少し詠んでみるか」



1-3)1

|さえずりや小高き丘の校舎まで届くぞ満ちるぞ吾が登校

|これほどのサクラが祝うお出迎え 俺の初日ぞ勝負晴れ

|いざ来いと仁王で立ちたる校門の待てども待てども如何ばかり


 凸激が一人ぶつぶつとやっているうちに時も経ち、校門の坂道の下には人影が見えていた。
 それは、旭丘分校に通う女子二人、宮内れんげ(小4)&一条蛍(中2)の二人だった。
 ‥この春、旭丘分校に通う生徒数は、これで全部である。


 「ほたるん、あの校門に立ってるの誰ですのん?」
 「‥れんちゃん、あれはきっと噂の転入生ですよ」


 「無を放て
  呼ぶのは誰ぞ
  吾が内なり

  俺の名は夕向凸激だ!!!


 「俺の名は夕向凸激だ!!!」
 「俺の名は夕向凸激だ!!!」
 「・・夕向凸激だ!!!」
 「・・・凸激だ!!!」


 どこに向かって叫んだというのだろうか‥
 校門に立つ少年の影から、自分の名を名乗るビックリするぐらいのドデカい一声が放たれた。
 少年のその名を‥やまびこがさらに繰り返し、その余韻がれんげと蛍の耳を振るわせた。


 「なんなー☆あれ?、映画のワンシーンみたいなーん
  かっこいいのんなー、ウチもやってみたいーん☆」
 「(ははは)‥とてもキャラ立ってそうですね」



1-3)2

 その時、凸激はまだ二人の登場に気がついていなかった。
 自分の叫びにスッキリしたのか、目を閉じてその余韻に浸っていた。
 そして、目を開けたか開けないかと同時に‥飛び込んできたものがあった。


 「にゃんぱすー」
 「おはようございます」


 当然のその挨拶にびっくらしたものの、凸激はいたって冷静だった。


 「ちょっとまて、お前今なんて言った?」

 「にゃんぱすー」

 「・・・・」

 「それは、何語なんだ?いつからだ?」
 「そんなん覚えてないん、気がついたらウチだけが使ってたん」
 「それじゃ、お前専用のお前だけのマイ挨拶言葉かよッ、極(ごく)かっこえぇ!!
  ‥でも、まだまだあまいな‥お前はまだその言葉のときめきをフルに活用してはいまい」
 「・・・・」


 腕を組みながら、上から見下ろすようにして凸激がそういうと
 凸激は再びビックリするぐらいの大きな声で、校門から山野に向かって
 れんげのそれで叫んでみせた。


 「にゃんぱすー」

 「にゃんぱすー」
 「にゃんぱすー」
 「にゃんぱすー」


 こだまするにゃんぱすーが、れんげの心を揺さぶった。


 「どうだ、こんな風にはまだ使ったことなんかないだろう」
 「☆★☆★・・ウチもやるーん!」



 「にゃんぱすー」

 「にゃんぱすー」
 「にゃんぱすー」
 「にゃんぱすー」


 「すごいーん、すがすがしいのーん」
 「そうだろう、そうだろう。じゃ次お前だッ」
 「え、私‥わたし蛍です。わたしもやるんですか?」
 「普通で良いんだよ、挨拶なんて気持ちなんだからさ」
 「は、はい‥」



 「おはよう ございまーす」

 「おはよう ございまーす」
 「おはよう ございまーす」
 「おはよう ございまーす」


 「こんなのここ来てはじめてですけど、こだまに返される挨拶っていうのもいいですね。」
 「そうだろう、そうだろう、
  それにしてもお前ら、そろって見れば見るほど大当たりだな
  俺、なんかワクワクして来ちまったぜ
  でもいいかッ、俺の勉強の計画だけは邪魔済んじゃねぇぞ」
 「・・・・」


 そう言い捨てると、凸激は自分の自転車を動かすべく二人に背中を向けた。


 「ほたるん、大当たりってなんな?‥」
 「さぁ?‥変わってらっしゃるのはたしかですから」



1-3)3

 凸激が自転車を押し出すと、三人は揃って校舎に向かって歩き出した。


 「・・・どうしてそんなに荷物もってくるん!?、しかも自転車なん」
 「だから今言ったろう、俺の勉強の計画だけは邪魔すんなって」
 「その中身全部が勉強の道具なんですか?」
 「そうだけど‥
  これだけあると重いから、こっちは学校に置いとく方だけどな
  それより、まだ他に誰も来ねぇんだけど、誰が校舎開けんだよ?この学校」

 「鍵なんか掛かってないから、いつでも入れるん」


 鍵が掛かってない‥凸激はそれに驚き、並んで歩いていた足を止めた。


 「お、おおい、ちょっと待て、鍵してないってどういうことだよ」

 「平和なんですよ、ここは」‥蛍が半身を返して、返事をした。

 「平和と鍵は関係ないだろう・・・
 (まぁいいか‥朝勉するのに支障はないし‥とりあえず俺的には問題なし‥と思う)」
posted by 木田舎滝ゆる里 at 23:45 | Comment(0) | ネタ文学 | 更新情報をチェックする
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