↓3)改稿.2016/04/30...20160315...
凸激が、れんげと蛍のあとに付いていくと、校舎どころか教室にも鍵が掛かっていなかった。
‥呆れた気持ちで教室の中を見回していると、女子二人がどこかに行くようだった。
「おーい、どこ行くんだよ?」
「ウサギさんの世話ですよ」
「あと、ニワトリさんもいるん、どうせだから、一緒についてくるのーん」
「ウサギさん‥ニワトリさん‥??」(う〜ん、嫌な予感がするぜ)
どうしたことか、校舎から飼育小屋までかなりの距離があった。
凸激は思った。「なぜなんだ?‥」
ただでさえ人数の少ない学校なんだから‥校舎の近くに作れば良いはずだ。
なぜ、そうなっていないのだろうか‥
そして回りをよく見れば、有り余る敷地内には、畑も見受けられた。
それは、どこからどこまでを学校との境界と見ればいいのかに悩ましいほどだった。
‥しかしまぁ、それはそれで散策に飽きの来ない分校に思えた。
飼育小屋に着くと、そこの扉にはなんと、唯一と思しき引っかけが付いていた。
その引っかけが鍵(?)とは言え‥留め口に合わせて捻って固定する構造にはない。
なんともまぁ‥扉が風で開かなきゃ良いぐらいのとても簡素な鍵(?)だった。
凸激はそれを見るなり、にやっとした。
1-3)1
「なぁ、どうしてここにだけ‥鍵が付いてんだ?」
「それは、ウサギとニワトリが逃げないようにと、あと‥
キツネやイタチやらの獣に襲われないように付けてあるんだと思いますよ」
「ほう、それじゃ
ここの鍵の必要と、校舎や教室の鍵の必要はどうして等しく扱われていないんだ?
おかしいだろう、そうは思わないのか?
校舎の中にだって食材置いてあるんだろう、そのエサからしてそうだし‥」
「大丈夫、そこまで気にしなくてもいいん
それに、野生の獣は、扉から入ってくるとは限らないのん」
「え★え☆??‥そうかぁ‥??
腑に落ちないんだけど・・・・
(おッ、一句浮かんだっ)」
|腑に落ちぬ鍵の用と不用とは、鬼は外なり福は内なり
「それ短歌ですね、お好きなんですか?」
「別に好きって言うか、思い浮かんでくるって言うか
まぁ、趣味といえば趣味だろうな」
「ねぇ、とっつん
なんで小屋の中に入ってこないん?」
「え?、誰?、俺?‥とっつんって俺の事かよ」
「さっき、ゆうむかいとつげきって‥叫んでたん、だからとっつんなん」
「・・・で、そういうお前はなんてんだ?」
「ウチは、れんげなのん。ほたるんからは、れんちゃんって呼ばれてますん」
「じゃ、れんげにほたる姉だな。よろしく頼むぜ」
・・・・・じとー・・・・・
凸激は、なぜか飼育小屋の前に立ち止まったままで、なかなかに中に入ろうとする様子がなかった。
れんげの目にそれは、動物が苦手と言うよりは、明らかに手抜きのそぶりに映って見えていた。
1-3)2
「とっつん、さっさとこっち来て、ウサギにエサあげてみるん
どうして入り口からこっちに入って来ないんな?」
「あ、俺、今日は初日だし、手順わからないから見てるだけでいいよ
それに今、俺って、狼さんの役だからさぁ、中に入ると危ないしー」
「・・・なに言ってるんですのーんッ」
|女子二人ウサギと戯る小屋の中 俺はひとり外で狼目線
「ぷ、ぷはははははは、ははっははは」
凸激のその詠みっぷりが蛍には大うけだったらしく、れんげの横で笑いこけだした。
その様子にれんげは、少し引いた目で意外に思うも、
‥凸激のその飼育拒否な有り様に、警戒心を膨らませざるを得なかった。
れんげのその様子は、凸激から見ても、明らかに敵対的にむっとしているのが見て取れていた。
「(なんだよ、あいつ‥
あれは譲らないぞって顔だぞ‥なるほどね、生きもの大好きって奴だな)」
1-3)3
「なぁところでさぁ、ここの校歌ってどんな感じなんだ?教えてくれよ
始業式で歌うんだろう。俺だけ口パクなのはかっこわるいからさ」
「それなら、さっさと手伝うんなー、そうすれば、練習する時間取れるんなー」
「‥それじゃ、れんげちゃんの言う通りにして、済ませちまうとしようかなっと」
「あのう、どうしてそんなに急いで校歌を歌いたいんですか?」
「そりゃ、進級の始業式ってぐらいなら‥他の先生らもやって来るんだろう
俺の勉強の計画に支障をきたさない為にも、始めの印象づけが肝心だからな」
「勉強の計画って、上の大学とか目指してるんですか?」
「え?、俺ってそんな感じに見えるの?
俺の計画は、一人だと退屈だからさ、時間を調節しておくための作戦だよ
テストの点数とか、成績とか、進学とか、そんなのはとりあえず置いといてさ
分校なんだぜ、ここにいる三人で勢揃いなんだぜ
まわりに大勢居る世界と比べたら、自分たちがどんな感じかもよくわからねぇのにさ
高校生活だけで推し量りましょうなんて頃合いになっても、勉強だなんて言われたくないだろう
なら、ここにいる間に、高校課程までをどれだけやっつけられるかだ‥」
れんげと蛍は、凸激のその考えを聞きながら唖然としてしまっていた。
今までのんびりとすごしてきたここの校風からすれば、明らかに異質の世界観の持ち主だったからだ。
でもまぁ、その目的が普通のガリ勉ではないという点では、多少こんがらがっていた。
それは、凸激が男だからなのか、凸激が変わっているからなのか、凸激だからなのか‥
その区別が付かない自分たちをそこに思えば、尚のこと
自分たちの置かれている立場の不利と、日々の物足りなさを思わずにはいられないのだった。
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