↓2)改稿.2016/04/30...20160316...
進級始業式を終え、旭丘分校での一学期が始まった。
当然ながら教室にいるのは、先生の一穂、生徒の蛍、れんげ、そして凸激の四人だけである。
「それじゃ、とっつん、もう仲良くなってるみたいだけど
改めて自己紹介してもらおうかな」
「なんだよ、先生までとっつんって呼ぶのかよ
さっきまでは夕向くんだったのはなんなんだよ」
「いやぁもう、一学期も始まったし、
ここではいつもこんな感じなんだよね
どうしても、とっつんて、呼ばれるのはダメかな?」
「ダメかどうかじゃなくってさ、そんな呼ばれ方されるのに慣れてないんだよ
むずかゆいって言うかさ、なじまないって言うかさ、まだピンと来てねぇし」
「じゃ、以前はなんて呼ばれてたのかな?」
「え?、何?、これって自己紹介のうちに入るのか?」
「おっ、切り返しうまいな。じゃ、はじめて」
1-2)1
「親の仕事の都合で、分校からさらなる分校に越してくることになりました
夕向凸激(ゆうむかいとつげき)、五年生です
ここの分校は、中学校も一緒くたなので、かなりコケました‥以上」
「ん、終わったかな。それじゃ、席についていいよん」
「・・・はい先生!」
「なにかな、とっつん?」
「そっちの二人はしねぇのか?、やらないのは変だと思う」
「それは、どうしてそう思うのかな?」
「え、やるんじゃないのか?、俺のいたところでは、先生もやったぞ」
「・・・それはきっと、一年生が入ってきたから、お手本を見せるのに付き合ったんだよ」
「えーえー、端折んないでみんなでやろうぜ、
四人しかいねぇんだし、今日は他に用事なんかないんだろう」
「・・・・」
そう言われると‥一穂としても、ダメと言うだけの意味合いもまたないのだった。
「それじゃ、次ほたるんからお願いね」
「あ、はい」
「改めまして、一条蛍(いちじょうほたる)、中学二年です
ここには、小学五年生の春に、東京から家族揃って引っ越してきました
仲良くしましょうね、ゆうちゃん♪(にこっ)」
(・・・ゆうちゃん、まるで誰のことだかわかんねぇ。どうしよう‥・・・)
「にゃんぱすー
前から一度、自己紹介やってみたかったのん
宮内れんげ、小学四年生なのん
ここには、小学一年生からずっといるん。先生はうちの姉ねえでもあるん
わからないことがあったら、ウチに聞くん」
「ええー!、先生とれんげって、姉妹なのかよ!?、ほんとかよ!」
1-2)2
凸激はとても信じがたかった。とは言っても、一穂とれんげを見比べてみても母娘とも思えない。
とはいえ、大人の女性に年齢を直接的に聞いては、タダの馬鹿にしか見えないだけなのだ。
‥そこで、凸激は、とっさの気転から問いただせそうな角度を思いつき、そして訊いたのだった。
「はい先生!、質問いいですか?」
「・・・今度はなーに?」
「先生は、中学高校大学とダブったことがありますか?」
「????‥
(何を聞いてくるかと思えば、なに‥この質問‥)
とっつん、普通に考えても、途中でダブルような人は、教師の道を選択しないと思うんよ」
「・・・
(ちッ、あっさり返して来やがった、まぁいいか)
じゃ、自己紹介の締め括り先生ね。流れ崩さないでお願いしまーす」
「(ああ‥そうね)
宮内一穂(みやうちかずほ)、ここを巣立って、ここに教師として戻ってきました
実家は地元の農家なので、兼業も同然の忙しい毎日です
さしあたって言うこともないけど、頑張っていこう!‥以上」
(・・・じゃ、先生は大学を卒業して、即ここにやって来たのか??・・・)
「じゃさぁ、度々訊くけどさ
宮内先生が、先生何年目の時にれんげがここに入学したのさ?」
「・・・
(この子、わたしの年齢を逆算しようとしているのか、知ってどうする?‥何になる?)
そうね、何年目だったかな‥少なくても片手で数えられる範囲だろうね(にこっ)」
「ええー!!!」
凸激は、片手の数はサバ読みであると思った。どう考えても、その半分以下だと思った。
どう考えたって、それは‥
先生としては、新米ほやほや程度の頃合いに、れんげが入ってくる勘定にならざるを得ないのだ。
「とっつん、その『ええ!!』って何かな?、そこは驚くところでもないでしょ‥」
「えー、驚くだろう、
前の分校の先生が、口にこぼしてたぜ
本当は‥僕が赴任を承諾しなかったら、ここは廃校になっていたかもって
宮内先生だって、似たようなもんなんだろう
こんなさらなる分校にまで、好き好んで来てくれる先生なんて、探す方がたいへんするし
自分が先生になった方が早いって話だろう‥これって‥
感動するところだぞ、ふつう・・・
(おッ、一句来たァ)」
|学び舎を職場に選んだその心うまれ来た妹の為かも
その歌が詠まれると同時に、教室内の空気は一変した。
一番に驚いたのは、一穂‥本人だった。
半分ホコリを被って忘れかけていたあの頃の想いが引っ張り出されたからだった。
思えばあれは高校二年の頃、進学するかどうするかを決めかねていた時分に、れんげが生まれたのだ。
れんげには学校が必要になる。ならば、自分が先生になるしかない。
‥それが家族として姉として、してやれる選択肢だと思った。
自分が、ここの分校‥母校の先生になるしか、それを叶えてあげられる確かなすべが無かった。
‥それは現に、今こうしてそのままだった。
三年間通って来た二人にしてもそうだった。
今ここに、転入生の凸激によって、
自分たちが、今まで気がついていなかった一穂の視点を投げかけられたのである。
一穂が教師の道を選んで尚且つ分校に戻る選択をしなかったとしたら、
それこそ、この分校は消えていたのかも知れないのだと‥
今更ながらにそんな人生はありえないのだという気持ちが胸を高鳴らせていた。
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