↓3)改稿.2016/05/01...20160320...
三人が揃うと、
蛍とれんげから、集合場所のバス停をあとにして歩き出した。凸激もそれに続いた。
蛍が凸激にどんなお菓子が好きなのかを訪ねたところ、色々と話が進み
‥どうにもこの路は、駄菓子屋に向かっているようだった。
「え、駄菓子屋って
とんがってる感じの姉ちゃんのやってる『かがや』って店だろう?‥」
「そうですよ、ゆうちゃん早いですね、もう行ったんですか?」
「そりゃ、見つければ入るだろう
ただでさえ、ここら辺りの店の数の少なさと来たらびっくりなんだぜ
それよりさ、この辺に道端野菜はないのか?
探したんだけどさ、見当たらなかったから、できたら先に教えて欲しいんだけど」
「とっつん、なんで今から道端野菜なのん?
これから歓迎会だから夕時にはお料理もでるん
お菓子も今から買いに行くのん」
「あ、俺って、駄菓子の甘さってあまり好きじゃないんだよな・・・」
「なんですとーん
せっかく姉ねえからお金もらってるのに
それじゃ駄菓子買って来ても、ウチらだけで食べるしかないのんな‥」
「そうですね
じゃ、代わりに無人販売所のところまで、ゆーちゃんをご案内と行きましょうか」
「わかりましたん、そっちに行きましょかー」
1-3)1
れんげ、蛍、凸激の三人が、凸激の要望で近くの無人販売所にやってきた。
その棚には、この時間としては、どうにかジャガイモの袋がいくつか残っていた。
「おおっ、こんなところにあったのか、しかも新ジャガっぽいなこれ」
「ねぇ、とっつん
ジャガイモ買って、家に持って帰るのん?」
「いいや、食べるよ歓迎会の前に」
「え、えー、ナマのままで食べるんですか?‥しかもその一袋分全部」
「ほたる姉、何言ってんだよ、さすがにそれはないよ
ちゃんと料理してもらってから食うぜ」
「・・・・」
「れんちゃん、どういうことでしょうか?」
「さぁ、どういうことでしょう?」
1-3)2
凸激のその発言は、れんげと蛍の二人には、あまりにも意味不明だった。
そんな二人の様子を敢えて気にせずに、凸激は
道端野菜の販売場所と、ゲットしたジャガイモと周りの風景とをまじまじと見比べていた。
そして‥凸激は、おもむろに、腑に落ちない疑問をれんげと蛍にぶつけてみたのだった。
「それにしてもさ、どうしてここにしか無いんだ?
こーんなに広い土地の中に、ポツンとさ‥」
「それは、きっと、これが関係しているのではないでしょうか?
前々から思っていましたが
これって、とてもスゴいことだと思います」
「あー、そうか!
そういうことか、そうだよな
そう考えると、道端野菜より道の駅になってくるんだっ」
蛍と凸激が言っている「これ」とは勿論、レジのことである。
言うまでも無いことだが、無人販売所のレジとは、
支払いの百円玉をチャリンと入れるささやかなお金入れのことである。
‥でも、どうしてそこから道の駅に話が飛ぶのだろうか?
蛍とれんげには、凸激のその着想がとても不思議に思えたのだった。
「とっつん、さっきわかってなかったのに
どうしてそんなにいきなりわかったようになってるのん?」
「なんだ、れんげにはこれが貯金箱に見えないのか?
道のあっちこっちに貯金箱が落ちている光景を思い浮かべて見ろよ
そしたらどうなると思う?
必ずなんらかのトラブルが起こちゃうんだぜ
トラブルが起こる度に、ここらの大人同士で、ののしりあうことになるかもな
だから、それが嫌なら、道端野菜より道の駅に並べた方がずっと良いってわけさ」
「・・・この辺りで
ネコババにカッパライするような人はおらんと思うん」
「別に、人間じゃなくてもいいさ
例えば、外から腹を空かした野良犬がやって来たっていいし
ネズミやタヌキが囓っちまったって問題になるだろう
あっちこっちに、道端野菜が広がっているとその確率が上がるんだよ」
「‥私、わかりました!
それで無人販売より道の駅なんですね
道の駅の方が、安心して売れますし、お値段を好きに付けることもできますから
ずっと不思議に思っていたスーパー野菜との違いの謎がこれで解けました♪」
「あ、俺も、一句浮かんできた!」
|「食べてよね」気持ちの裏に「買ってよね」道端野菜より道の駅
1-3)3
「とっつんは、道の駅に行ったことあるのん?」
「知らねぇ、人気ぶりならテレビで見たことはある」
「ほたるんは?」
「私の家でもそこまでして利用しませんね
ここでは、近くのお野菜でも十分においしいですから」
「なんなー、みんな行ったことないーん
そういうのは知ったかぶりって言いますん」
“ 知ったかぶりのー、道の駅ー♪
食べたいものがー売ってるのかー♪
食べさせたくてー作ったのかー♪
作ってみたからーおすそ分けー♪
それすらもーわからないー♪
行ったことのないー、道の駅ー♪ ”
何を思ったのか、れんげがいきなり即興で唄いだした。
よく聞いていると、さすが農家の娘と言わんばかりの鋭い指摘をしているようだった。
如何に道の駅が、農家の持ち込み中心で、顔信用付きだからと言っても、
売り出した野菜の品目との付き合い年季までは、示されてはいまい。
なぜなら、それが1〜2年程度しか手掛けたことのない駆け出し野菜でも
10〜20年手掛けてきた熟練野菜でも、自由に値段が付くことで織り込まれてしまうからだ。
‥中には物好きにも、珍しい野菜狙いの目立ちたがり屋な生産者もいることだろう。
そこを考えると、どうしたって道端野菜では、売れ残ってもガッカリするから
定番の野菜しか置かれていないことになる。
だから‥道の駅にしてみたら、途端に品数豊富に見えるのは当然の流れだったことになる。
「じゃさぁ、今度、遠足でも社会科見学でも兼ねて
宮内先生に連れてってもらおうぜ
農家なんだし、ダメとは言わないと思う」
「ゆうちゃん、それ、とても良いアイデアだと思います」
「ウチも、道の駅に行ってみたいーん」
三人は駄菓子屋に足を向けるべく、無人販売所をあとにした。
その途中
凸激は、ついこないだ‥はじめて入ったばかりの「かがや」での出来事を思い返していた。
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