2016年03月24日

【二次創作】のんのんびより 10 俺の芋がコロッケにの巻

↓4)改稿.2016/05/03...20160324...

 脇ばなしも一息ついて、蛍とれんげは、駄菓子選びに戻った。
 凸激はというと、如何にも用ありげに、レジ前のスペースにそのまま突っ立っていた。
 楓は、その凸激の買い物をする気のない様子を見て取ると、
 こないだの凸激との初対面を思い出して尋ねたのだった。


 「おい、とっつん」
 「なに?楓姉」

 「お前、あの二人に変なこと吹き込んでないだろうな?」

 小声気味に話すその楓の言葉に、
 凸激は、ここがチャンスとばかりに体をレジの方に向き直り、意気揚々に答えた。

 「大丈夫でーす。楓姉はその席に安心して座っていてくださーい」

 「なんだ、その妙にキュンとくるような台詞は、お前、何か下心あるだろう?」

 「実は、
  (そういいながら凸激は、まずズボンから百円玉を一枚取り出すと、レジの台に叩き付けた。)
  (その後から、改めて手にしていたジャガイモの袋を楓の目の前に差し出すと、こう注文した。)
  今食いたいから、この芋を蒸かして欲しいんだけど‥」


 それを見て、楓は思った。思ったと言うより呆れた。
 凸激は、駄菓子に関わらず怪しい甘味料を断固拒否していると言うことに。
 そうなると、楓も商売上がったりだ。それで、こんな取引を持ちかけているのかと‥
 勿論、楓としては、断る理由などまったくなかったが、どこか自分に情けなくも思えた。
 ‥とは言え、向こうがそれで好いというのなら、甘えて見るまでだった。


 「一人で食うのか?」

 楓がそう聞くと、凸激は歌で返した。


|ひとりでは周りの目が気になって おいしさ半減 分ければ倍増


 「そんなの歌にして言わねぇで、ふつうに口で言えよ、
  じゃ、ちょっと待ってろ、いま蒸かしてやるから」

 楓はそう言うと、台所に向かうべく振り返ったが、
 ふと気になって、足を止め、頭半分戻してこう訊いた。

 「なぁ、レンジでチンでもいいか?」
 「電子レンジ禁止でお願いしまーす」
 「な、なんだよとっつん、お前のその性格はどこから来るんだ?」
 「親ゆずりでーす。あと、味付けは塩で、よろしくお願いしまーす」


 それを聞くと、楓もまんざらでもない様子で、ジャガイモをさげて奥に入っていった。



1-4)1

 楓と凸激のさも親しげそうなやり取りが、他の二人に、腑に落ちない何かを感じさせていた。
 そう思うと同時に、れんげと蛍の足は再び凸激の前に向いていた。


 ・・・・じーぃーっ・・・・


 「え、何?、二人とも歓迎会の菓子選びもう済んだのか?」

 「何かと思えば、ゆうちゃんのあのお芋ってこういうことだったんですね」
 「‥こういうことだったんのんな」

 「そうだけど‥他にも何か言いたそうだな、何?」

 「ねぇれんちゃん、駄菓子屋さんでお芋蒸かしてもらうのってどう思います?」
 「今までにない発想なのん、まさに青天の霹靂なーん」
 「そうですよね、駄菓子屋さんでは駄菓子を買うのが当たり前だと思ってました」

 「そーなん、それでいいなら、駄菓子屋はただの何でも屋になってしまうのんな」


 (え?、れんちゃんそれって‥ここのお店のスタイルそのまんまの肯定なのでは‥)


 「そんなことないだろう
  色々扱ってたって、コンビニはコンビニだし、駄菓子屋は駄菓子屋だろう
  コンビニにだって、駄菓子はそこそこあるだろうし、

  客寄せにも、おでんとか唐揚げとか、いろいろとできたて調理もしてるみたいだからな
  だったら駄菓子屋で、芋蒸かしてもらったって同じだと思うぞ」


 (え?、ゆうちゃんもそれ‥何でもありで良いとの物言いです‥あれ)


 「ほたるん、どう思うん?」
 「ええ、まぁ‥そうですね・・・(蛍は瞬速で自身の過去例を思い返した)

  私がここにはじめて来た時に、かき氷のメニューを見て意外に思ったほどですから
  お金を払って、お芋を蒸かしてもらっても不思議はないのかも知れません・・

  (あれー???、私、いつの間にか自分で疑問を解消しちゃってますー‥)」


|商いのはじめビックリふしぎ顔 手にして良けりゃ あって良しとな


 そう歌を詠み散らして、一息ついたか付かないか‥
 凸激が、脈絡もなく
 俺は腹を空かせているんだと、催促げに、店の奥に向かって言い放った。


 「ねぇ、楓姉、いまどの辺〜?」

 「うるせぇ!、火が入ったところだ、待っとけ」



1-4)2

 ‥そんなにもお腹が空いているのだろうか?
 蛍には、その凸激の馴れ馴れしい感じが、かわいいと言うよりは、むしろ鬱陶しさに思えた。


 「ゆうちゃんって、誰にでもそんな風なんですか?」

 「え?、腹減ってれば聞きたくもなるだろう、作ってもらってんだし」
 「・・・それもそうですね‥
  (あれ、なにが聞きたかったんでしょう?)」


 考えてみれば、確かにそうだった。それに凸激はなんだかんだとお金を払っていた。
 お店に食事に来て、注文した料理がなかなか出て来なければ、誰だって同じになる。
 ‥そう思ったら、蛍は自分がなにを聞きたかったのかの的を見失ってしまった。


 「とっつん、家では夕飯のお手伝いとかしないのん?」


 (そ、それですよ!)
 蛍は自分が凸激に訊きたかった方向を、れんげの言葉で吹き返した。
 でもそれは、凸激にとって、訝しげな問いだったようだ。



1-4)3

 「え?・・・・
  それはもしかして
  歓迎会と言いながら、俺にもなにか手伝えという話になるのか?」

 「私、小学生のうちからそういう心構えになっているのは良くないと思います」
 「そーなん、時代は今や男も台所に立つよう求められる時代なのーん」


 それにまったく興味が無いということではなかったにせよ、自分の歓迎会なのだからと
 いつもながらに、それほどにやる気があるという訳でも無かった。
 凸激は、思いついたようにその気持ちを歌に表現した。
 ‥歌の方が圧倒的に説得力があり、変に揚げ足を取られることもないからでもある。ところが、


|台所おんなの城のその空気くずしていいなら財布は半分

|味よりも当番制がいいのなら、旦那の稼ぎに文句垂れるな

|睦まじく半分こをやり過ぎりゃ 食の分担 縁のわかれ目


 「‥てなことを、俺んちの父ちゃんが言ってたな
  俺もそういうもんだと思ってたけど違うのか?」


 ‥正直なのか馬鹿なのか、考えがウケウリなだけに
 凸激のその詠みは、逆に、蛍とれんげの女の気持ちとやらに火を付けてしまった。


 「・・・・とっつんて、このまま亭主関白まっしぐらな感じなんなー」

 「どうもそのようですね、どうしましょう
  私、なにかこう‥とてもギャフンと言わせたくなってきました
  れんちゃんはどうですか?」

 「ウチもなん
  歓迎会だからと言って、ただ飯だけで帰ってもいいという法則はないーん」

 「・・・・じゃ、こういうのはどうでしょう

  ちょうどジャガイモを蒸かしているわけですし
  このまま夕食のメニューはコロッケと言うことにして
  ゆうちゃんに皮をむいてもらって、さらにジャガイモをつぶしてもらうというのは?」

 「それ好いん、ほたるんナイスアイデアなのん」


 「‥な、なに言ってんだよ
  あの芋は、今ここで食べるように買ってきたんだぞ
  今更変更できるような腹の虫じゃないんだぞ」



1-4)4

 「それはおいしそうな話だな」


 「なぁ、楓姉まで‥」

 蒸し器に火を付けて手持ち無沙汰になった楓が、
 レジのところに戻ってきていて、後ろで話を聞いていたのである。
 ‥楓は、如何にも自分が腕を振るわんとしてか、こう言った。

 「一人分のコロッケなんか普段作っても不経済だからな
  久しぶりだな
  しかも、新ジャガのコロッケはうまいぞ〜」


 こうなると、もはや、凸激に異論を挟める余地は無かった。
 ‥どうにも、楓も凸激の歓迎会にはじめから参加だったらしい。
 ‥こうなっては、二度手間を無理強いする方が、無理だった。(ガックリ)


|どうしてだ‥俺の食う芋がコロッケに‥今ここで食いたや蒸したジャガ OTL

posted by 木田舎滝ゆる里 at 13:53 | Comment(0) | ネタ文学 | 更新情報をチェックする
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