↓4)改稿.2016/11/27...20160326...
旭丘分校教師、宮内一穂の自宅(宮内家)において、転入生、夕向凸激の歓迎会の準備が始まった。
名目は歓迎会ではあったが、特にぎやかな飾り付けをすることなく事は進んでいた。
それは、一穂の判断からそのような具合になった。
‥凸激の雰囲気から、もしかしたら、お勉強に差し障りが出るから発言を想定してのことだった。
さいわいそのような中止に至ることはなく、凸激もまたその辺の華やかさにこだわる性格に無かった。
楓、蛍、れんげ、凸激の四人が、夕食の準備をしている合間の
‥その頃‥
一穂は、自室にて、凸激の為に特別なプリントを作成していた。
いつの間にか、その歓迎会の大ざっぱさが、一穂自身に
凸激に教師たる貫禄と意地を見せる上においての時間とタイミングを都合していた。
わざわざ急ごしらえにプリントを作ることになったのも、
‥口で説明するだけよりも、何かと書き出しておいた方が、後で混乱しないだろうとの考えだった。
「いやぁインターネットってのは、ほんと便利で助かるわ
こんなのひらで言葉選んで、整理してたら、全然間に合わないからね」
一穂は、自室にてノートパソコンをネットに繋げて
ネット記事をコピペしながら、自身の言葉を足して再構成した後、
‥それを最後にプリンターで印刷したのだった。
※ ちなみに
旭丘分校にはまだネット配線は届いていない事から(予算的に無理)
一穂は、ノートパソコンを持ち歩き、プリンターは自宅と学校の両方に備えて
どうにか‥宿題や学習に利用するためのプリント等を作成していた。(まぁそんな感じ)
1-4)1
‥ところ変わって、宮内家の台所では
凸激が慣れない料理作業で、先ほどの芋を用いたコロッケづくりに奮闘させられていた。
凸激は、ほとほと腹が減りはじめており、どうにも、奮闘半分やけくそ半分の壊れ気味だった。
そんな凸激は、そんなやけくそさを、
おかしな唄にして唄いながら、皮をむいたあとのイモをつぶしまくっていた。
“ 道端ジャガイモがコロッケになる〜♪
油で揚げられてー、天に召される〜♪
ちゃんと供養をしてあげなくちゃ〜♪
早くおいでよ、おいらの喉がゴロゴロ鳴って〜♪
三途の川の渡りを待っている〜、生唾ぁごっくん♪ ”
次に、イモには他の具が投入され、混ぜ捏ねへと進んだ。
‥容赦なくコロッケ生地作りが、凸激の役だった。
まぁまんざら、手伝うのが嫌だというほどでもない様子だった。
そんな凸激に刺激されてか、れんげも負けじと一緒に唄いだしていた。
蛍には大うけで、なんともにぎやかな料理大会と言った風だった。
「なぁ楓姉、こんなんでいいのか?」
「おう、そんなもんかな、じゃ、後は引っ込んでていいぞ」
楓にそう言われると
‥凸激はトホトホと手を洗いながら、その開放感から、いつもの顔に戻ってこう詠んだ。
|たらちねのまだまだ遅き夕飯を手伝う腹ぺこ「ぐー」と我慢
ちょうど、そこに一穂が作業を終えて、台所にやって来た。
「なんだいとっつん、なんだかふらふらしとるんな
お疲れの所なんだけど、居間の机の上にプリント置いといたから
食事が始まるまでの間に、目を通しておいて〜」
「あ、はぁ」
「さぁって、私もお料理、手伝うぞ」
凸激は言われるまでもなく、居間の机の前に座った。
すると、確かに 読めと言わんばかりのプリントが目に入った。
それを手にすると、凸激は途端に目を丸くして、驚天動地に陥った。
「なんだ‥これ!?‥
こうそつにんていしけん・・・のしょうかいだぞ〜‥???」
1-4)2
> 高卒認定試験の紹介だぞ〜(高等学校卒業程度認定試験:文部科学省)
略して高検とは、高等学校を卒業していない者等の学習成果を適切に評価し、
高等学校を卒業した者と「同等以上の学力」があるかを認定する試験のことである。
高認試験に合格した場合、
合格者は、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められ、以下の効果が発生する。
1.「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」とみなされる。
2.大学・短期大学・専門学校の入学試験の受験資格を得ることができる。
3.就職の際、地方自治体・民間企業の一部から高等学校卒業者と同等に扱われることができる。
> 受験資格
受験する年度末までに満16歳以上になる者。
高認試験では、この試験を受験する年度中に満16歳以上になる者で
大学入学資格を持たない者であれば、全日制高校課程の在籍者でも受験資格が与えられる。
但し、16歳・17歳の時点で合格しても、18歳の誕生日になるまで大学の受験資格がない。
> 試験科目
※ 先生がこんなこと言うのもなんだけどー
高検の学習修得要求は、高校一年課程に毛の生えた中身でもあるんだよー
国語 国語総合(古文・漢文を含む)
地理歴史 世界史A/世界史B:どちらか1科目必修
日本史A/日本史B/地理A/地理B:いずれか1科目必修
公民 現代社会/倫理/政治・経済
(現代社会1科目 または 倫理/政治・経済の2科目のどちらか必修)
数学 数学T
理科 科学と人間生活/物理基礎/化学基礎/生物基礎/地学基礎
(科学と人間生活と基礎が付く科目1科目 または 基礎が付く科目3科目のどちらか必修)
外国語 英語T
高認試験の合格者がさらに進学を希望する場合、学習塾や予備校などで補習することが望ましい。
高認の試験範囲では
「最低限の基礎的な知識」(高校一年課程程度の学力)が求められるだけにあることから、
大学・短大等の入試問題を解く程度の学力を身につけるには、独学では難しいとされている。
※ 高認試験の解答はすべてマークシート方式で行われている。
検定料が掛かることから、一回の検定で受かるよう努めるのが望ましいが、分けて受けることも可能。
一般には、一回の受験で合格するために、必要な全ての科目を選択する。
すでに一部の科目に合格している場合、その科目は次回以降免除され、改めて受け直す必要はない。
> 合格基準
文部科学省は公式には科目別の合格得点を公表していないが、大手予備校の分析によると、
難易度や平均点により合格ラインは変動し、年度や科目によっては40点前後で合格となることもある。
> 受験日及び出願期間
出願期間:(第1回試験)5月上旬、(第2回試験)9月上旬
受験日:(第1回試験)8月上旬、(第2回試験)11月上旬
> 高校で学ぶべきとされる学習範囲はとても広い。それゆえ、
> 当人の適性に沿うよう‥文系と理系に分けて学習を進められるように工夫と配慮がされている。
高検でもそうであるが、
理科と社会の選択肢で、それぞれ選ぶようになっているのもそれに準じている。
高校を選んだ時点で多くは、その学校の学習指導選択に沿うことになる。
だから‥学びたいと思っていても、必ずしも自由に科目を選択できるとは限らない。
(高検の方がむしろ自由だ。)
※ はっきり言ってしまえば、高校の学習要領範囲のすべてを履修する高校生は皆無と考えて良い。
これはつまり、文科省の考えた学習範囲の習得ばかりが学びでもないのだとの配慮と思って良い。
1-4)3
|「なんだこりぁ!?」略して高検こんなのが‥小五で知れる春の変
腹を空かした状態でそれを読んだ凸激の内には、いつもとは違う感覚が漂っていた。
‥それは、一穂が狙った凸激へのブレーキ効果とは、少し異なる雲を乗せていた。
夕向凸激は、以前の分校で呑み込みが早いことから、何だかんだで
小四のうちに小六までの学習範囲を理解し習得した。それはひとえに当時の担任の思惑でもあった。
小学校六年の間に中学課程も理解してしまえば、
本校と呼べる普通に多くの学生の通う中学に入った時に、学習を気にすることなく
思いっきり部活動などに励んで、友達との親睦の時間を割くことができるだろうとした戦略だった。
‥ようするに時間の融通だった。
それができたのも、分校の学習が自習形式という事情にあったからだった。
とりわけ凸激の二つ下には、呑み込みの悪い児童が入ってきてから
当時の担任はその児童に付きっ切りにならざるを得ず、何だかんだとそこにハマったのだった。
そして、凸激は、中学も併設されていたここ旭丘分校に転校する次第に至り
特に考えがあるわけでもなく、ただ漠然と以前の分校担任との目標を繰り上げして
ここでの中学課程期間の合間に、高校課程も学んでやろうと気を張っていた。
‥それを知るところとなった旭丘分校の担任一穂は
いくら何でもそれはどうかな‥という視点から、
中学から先には、このような事情もあるという次第を凸激に伝えておこうと考えたのだった。
1-4)4
‥空腹が凸激にこう呟かせていた。
「高校行かずに済ませられるなら、親もその分手間がはぶけるって話だな‥」
でも、それはそれとして、腑に落ちない部分もあった。
「高校一年の学習をしに行くだけで良いなら、どうして中学は三年間なんだ?
どうせなら四年間にすればいいはずだ。‥そうすると、高校ってなんだろう?
それこそ大学に行きたいだけなら、
高校すっ飛ばして、予備校だけ囓って、大学に行くってのも有りになる話だぞ‥」
‥つまり、そういう話だが
それにしたって、凸激自身のその後の学習理解と意欲が、滞らないとしての話が前提である‥
「でも、俺‥、そしたら何がしたいんだろう!?」
‥凸激の気持ちの中では、
すでに高校に行くのは、半分は無駄なこと‥という迷いが混ざり込み、
さらにそれはとどまることを知らないかのように
中学で部活動して、友達つくってわいわいやるんだという気持ちまで剥がれはじめ出したのである。
中学のそれは、すでに叶いそうにない望みだったし、
どう考えたって、今のペースで学習を進めれば
高検範囲の学習ならば、中学在校の間に習得できそうだとの思いもあった。
‥無理に高校課程すべての学習科目を習得する必要がないのなら、尚のことだと思った。
それもそうだろう。凸激にしてみれば、その元々の目的が時間の都合だったからだ。
都合する意味が薄れたのなら、その分を他のことに当てられる‥そう考えるのが当然だった。
ところが、そうなってくると
とくにガリ勉ということでもない凸激にとって、ぽっかり空いてしまったのが
自分自身がその先をどうしたいのか‥だった。
これからの自身の人生の先に向かって「これがしたい!」というものはまだ無かった。
ただ、小学六年までの間に中学課程を終えたいとした気持ちだけは、
確かにはっきりと、頑なさを維持したままの自分を感じた。
‥どう考えたって、それはそれで、もの凄く選択肢が広げるように思えた。
どうにも、一穂の狙いとはまた違った感性が、凸激の内から顔をのぞかせようとしていた。
女子ながらの視点から一穂が狙った「花の女子高生的な願望」というものを前提にできるほど
凸激の気持ちには、さほど高校生活に対する強い欲求と比重が大きくなかったのだった。
高検の情報を知ってしまった時点で、凸激はそのままに、人生の選択肢はもっと広いのだという
まったく別のベクトルでそこを捉えだしていた。
‥それでも、それはそれでどうすれば良いかなど、まだまだ闇だった。
凸激は、大の字に畳に寝転ぶと、漠然と居間の天井を見つめた。
|目的は進学に非ず吾が道ぞ 方向得ずに前など無し
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