2016年03月28日

【二次創作】のんのんびより 12 電子辞書の巻

↓3)改稿.2016/05/04...20160328...

|バス停の野ざらし腰掛け振り返る夕べのあれ・・朝令暮改


 歓迎会の翌日の朝、今日も好い陽気になりそうな春の空だった。
 凸激は、時間の30分も前にバス停に来て、野ざらしのベンチの真ん中に腰掛けて考えていた。


 そうだった。ずっと考えていたのだ。


 それは、夕べの歓迎会の際に、宮内先生から渡された高検紹介のプリントを読んでからだった。
 食事も進んだ途中、先生の方からプリントを読んだ感想を聞いてきたので、

 「あ、あれ?、俺、さっきの読んでから高校に行く意味ってのがわからなくなった‥」

 そう凸激は、思ったままを率直に答えた。
 ‥それは何というか、今日一日の凸激の様子と比べれば、まったく冴えのない返事だった。
 そんな、ぶっきらな気持ちの中で、一穂とのやり取りが始まろうとした矢先に
 れんげが、横からツッコンで来たのだった。


 「なんなーそれ?、とっつん、朝言っていたのと全然違うのーん
  朝は高校に行ったら楽しむようなこと言てたんに、今は高校には行かないって言ってるん
  そういうのは、朝令暮改って言うん‥」


 確かにそうだった。第三者視点から見れば、そういうことになる。
 それはそれで、とにかく格好が付かないのだ。どう見たって格好が悪い。
 ‥そう思ったら、その話はもう良いということで、お終いにしてしまえと思ったら

 こんどは楓が、興味ありげに
 「なんの話だ?せっかくなんだから聞かせろよ」という次第になった。


 高検紹介のプリントがその場にあったこともあり、
 結局、宮内一穂は、凸激の学力状況をすっかり話さざるを得なくなった。

 居合わせた一同は改めて驚いたものの

 ‥ここ旭丘分校の立場からすれば、高検があろうとそんな選択支は有り得ない
 全員揃ってその存在に疑問を抱きつつ、不思議で一杯になるのが当然だった。
 だから、どうしてそこで凸激が高校進学に疑問を抱いて止まったかは、誰にも解らなかった。

 一穂にしてみれば、教育の難しさを改めって実感した‥そんな面持ちだった。
 (‥でもまぁ、押さえるところは押さえた、成るようになれ)それが一穂でもあった。


 そんな感じで、夕べの歓迎会は過ぎたのだった。


 凸激にしてみれば、自分の学習事情の点については却って都合が良かったことから、
 一穂に対する信頼はさらに上がっていた。無論‥それを一穂が知る由など無かった。

 凸激が思い引っかかっていたのは、言うもない‥れんげのツッコミにあった。

 あれから、なんだか、自分がひどく半端に思えて癪だったのだ。
 ‥自分の中の何かが揺らいでいる感じが、とにかくみっともなく思えて癪だった。


 それはそれで、まずは、第一目標をクリアーしないことにはどうしようもないのだと、
 気持ちを切り替えて、凸激は、マイ電子辞書にスイッチを入れたのだった。



1-3)1

 しばらくすると、そこにれんげが変わりなくやって来た。


 でもなぜか、凸激は無反応で、何かを一心にお取り込み中の様子だった。
 それが気になって、れんげはそのまま凸激の横に、静かにちょこっと座った。

 ‥見れば、凸激が手元で何かを操作していた。
 ゲームで遊ぶのとも、ケイタイをいじるのともまた違った新鮮さが、れんげの脳天を駆け抜けた。
 そこに映っていたのは、明らかに活字だった。
 しかも、それは、明らかにハイテクな道具を使って勉強している様だった。

 でも、れんげは、はしゃぎたい気持ちを押さえてじっと堪えた。

 なぜなら、その時、不思議と昨朝の凸激の「邪魔するな」が思い浮かんで来たからだった。
 ‥そんなれんげが、遠慮しがちに声をのみ込みながら見入っていると


 その気配を酌み取ったのか、凸激は、朝の挨拶代わりにボソッと呟いた。


 「‥使い方の説明するの面倒くさいからさ、そのまま見てろよ
  バス来たら貸してやってもいいぞ」

 れんげはその言葉に、目を輝かせた。



1-3)2

 またしばらくすると、今度はそこに蛍がやって来た。


 蛍がいつも通りに挨拶しても、お約束の返事は来ず
 その代わりにどうしてか‥
 れんげが口の前に指を一本立てて「しーッ」をする始末だった。

 蛍は不思議に思って近づき、空いていたもう片方の凸激の隣に腰掛けて、
 凸激が何をしているのかをのぞき込んだ。

 蛍は、電子辞書よりも、凸激が電子辞書を使って何やら勉強している様の方に興味を抱いた。
 ‥あんなによく歌を詠むのだから、学習のしかたも違うのかなと思ったからだった。


 さすがに、ひとり頭数が増えて、テンション上がるのか‥

 蛍が感悦の声をこもらせつつも、少しずつ漏らしはじめ出す
 すると次第に、堪えていたれんげもつられるように、ちらほらと感量に声を漏らし始めた。
 ‥こうなっては、凸激には耳障りでしょうがない。


|電子辞書、操作のたびに横から声 顔が見てぇが‥かなり無理‥

|はさまれて勉強しずらいこの近さ 電子辞書のぞき込む女子二人


 他人が見たら、ちょっと羨ましそうなそんな光景の中
 凸激はかなりやりづらそうだったが、途中で手を止めるのも格好悪いと思ってもいた。
 ‥まぁそれはそれで想定内だったし、まんざらでもなかったのだった。



1-3)3

 「ゆうちゃん、バスがやって来ましたよ」


 蛍のそれを聞くと、
 凸激は朝のバス停での勉強を切り上げ、電子ペンのしまい込み方を、サッサと二人に説明した。

 「いいか、この電子ペンはここに挿して収納する、電源はここ、
  電子ペンは絶対に無くすなよ」


 ‥凸激はそう言うと
 朝の挨拶代わりに自分で口にした通りに、れんげの前に電子辞書を差し出した。


 「貸してもらって、いいのん?」
 「まぁ、バス乗ってて下向いてて気持ち悪くならない程度にな」

 「はいのーん♪」

 ‥とりあえずそんな注意はどうでも良いと言わんばかりに、
 れんげは凸激から電子辞書を受け取ると、いの一番にバスに乗り込んだ。


 「ほたる姉は、電子辞書使ったことあるのか?」
 「いいえ、まだ持ってませんけど」
 「ふーん、じゃ、れんげの次にでも使ってみれば‥」

 「え?、良いんですか‥」
 「使ってみないって手はないだろう
  あれって、中学生向きにいろいろ入ってるタイプだからさ、良いと思うよ」


 バスに乗り込みながらの凸激のその言葉に、蛍はいつものようにれんげの隣に座ることにした。


 凸激は、待ってましたとばかりに一番前の席に陣取った。
 それから、凸激は春の桜の風情を堪能しようと思い、まずは、左右の窓の見え具合を確認した。
posted by 木田舎滝ゆる里 at 16:02 | Comment(0) | ネタ文学 | 更新情報をチェックする
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