2016年04月08日

【二次創作】のんのんびより 17 夏休み来たりの巻

↓3)改稿.2016/05/10...20160407...

 一学期が終わった。夏休みが始まろうとしていた。
 旭丘分校恒例行事、終業式後の西瓜タイム(学級菜園産)を味わいながら
 凸激は、その味を噛みしめるほどに沸々とした思いをめぐらせていた。


 田植えといい、学級菜園といい、農家の育ちだからと言うだけでなく
 担任、宮内一穂はそんな時だけ、生き生きと目を開けていた。

 どう考えたって‥普通は逆だろうと思う所だ。(先生の方が本職なのだから)
 凸激からしてみると、それが却って、とても新鮮だった。

 凸激にとって、その時間だけが宮内先生をまともに先生として眺めることのできる時間だった。
 だからだろうか、農業への関心をそれなりに思い抱き始めていた。


 ‥しかし

 学級菜園を拡張して思う存分に試してやろうと考えを巡らせても
 バスの時間の少なさは最たる悩みの種の一つだった。
 そして、中1の勉強と小5の宿題を合わせてやる事自体が、とにかくしんどいのだった。
 ‥凸激は、とりあえず、宿題だけでもチャラにならないものかと‥種を飛ばしていた。


|西瓜食らい、真夏にとつげきこの川辺、乗り越え立つぞ志してー!!!


 凸激はおもむろに立ち上がり、川に向かって大きな声でそう詠み干すと、
 手にしていた残りを一気に囓囓して
 食い切った西瓜の皮を高々に放り投げた。西瓜の皮は、ポチャンと川に落ちた。

 ‥その裸足を伸ばしていたくせに、川に飛び出すでもなし
 勢いだけは豪快な凸激の詠唱に、一穂も蛍もれんげも不思議にこう思った。


 「なにをそんなにお頑張りになさいますのん‥???」


 凸激のそんな背中立ちを女子三人が見ている中、凸激が振り返った。

 「(ごっくん)おかわり、くださーい」

 どうにも、それ程に格好を付けているわけでもなく、
 歌だけが無駄に勢いがあるというだけで、中身はやっぱり普通の小五の少年だった。



1-3)1

 ‥否、撤回しよう、普通とは言うまい。
 女子三人は知るはずもなかった。そりゃさすがに前宣伝なんかできないからでもあった。
 凸激の思いはすでに、「夏休みの宿題は一つもやらねぇ‥」と決めていた。


|この夏ぞ!学力養う踏ん張りに「宿題やらねぇ」オレ流だ!


 小5で凸激のしていた中1学習は、自分が予定していたペースをいくらか遅れていた。
 原因は、ここ旭丘分校の不慣れな雑用事がいろいろと多かったことと、宿題にあった。
 ‥以前の分校では、とくに宿題というものがほとんど出されなかった事にも起因していた。

 そこでなんとしても、この夏にその遅れを取り戻したいと考えていた。

 それでなくとも、ここ通年の夏の暑さは猛者なのだ。そこを思えば、
 ‥どうしたって小5の宿題は邪魔だし、意味が無いとして棄てることにしたのだった。


 問題は、どう言いくるめて、夏休み明けての宿題帳消しを正当に持ち込むかだった。


 先生の居眠りと宿題無しを秤に掛けて
 ガツンと言ってやれば、今後の宿題と合わせて兆消しにできるはずだ。
 何も凸激は、遊び通そうと言うわけではない。中1の勉強を目的としていた。
 だから、そこでさらに先生の押し切りに成功すれば、その後のみんなの宿題をも無しにできるだろう。
 ‥そうなれば、ヒーローさながらだ。

 凸激は、そんな目論みを胸に抱いてこの夏に挑もうとしていた。

 ‥そのためにもまずは、中1の学習を前に進める必要があった。
 夏休みの宿題はやらなかった‥
 中1の学習もはかどっていません‥それでは、立つ瀬など有ろうはずもないのである。


 でも、面倒くさいことがさらにもう一つあった。
 それは、夏休み恒例の朝のラジオ体操だ。ここでは近所の神社で行われるという。

 凸激は、それも蹴ってやろうと思ったが、話を聞くに‥

 なにやら、ここではそのラジオ体操でさえ
 近所づきあい絡みで細々と行われているという話だった。それでは、
 まったく出ないと言うことになると、頭数も片手で余ることだし、近所の大人向けにも
 途端にイメージダウンに成りかねないのだ。

 それでなくても、蛍とれんげとの距離感が開いてしまいそうな流れだけは、
 凸激としても、そこは避けておきたいところだ‥
 なんでも、ここでは、他ではありえないという中学生も朝のラジオ体操に付き合うのが習わしらしい。
 蛍がそれに付き合うというのに、肝心の小学生の自分がさぼっては、後でうらまれても仕方なきこと。
 ‥禍根を残したくなければ、どうしたって、朝のラジオ体操は外せそうにないのだった。


 それならそれでしょうがない‥凸激はその代わりに
 夏休みお約束の工作&自由研究もついでと、やってなんか居られねぇって腹を決めていたのだった。



1-3)2

|校門をにんまり一歩出♪なつやすみッ♪夏草どもがわさわさ伸びる

|日なたから日かげに逃げる移ろいの涼風まだかバス停暑し

|涼しさが開いて飛び出すこのひんやり 汗ひきたりゴキゲン発車

|蒸し暑さ下車にて感ずる晴れて自由♪ようこそ夏!来たり今


 「それじゃな、明日の朝、神社でな」

 ‥れんげと別れると、凸激は途中まで蛍と一緒になる
 いつものことだったが、問答無用で気分は、恋仲の‥もとい‥姉弟の帰り道だった。
 特に何を話すというわけでもなかったが、
 蛍はこの日の西瓜タイムでの凸激の「乗り越え立つぞ志して」が少々気になっていた。


 「ねぇ、ゆうちゃん
  この夏休みに何か計画でもあるんですか?
  西瓜食べてる時になにか言ってましたよね」

 「あ、あれか‥
  まぁいろいろと中1の方の学習が遅れてるからな
  とくに英語がさぁ、根っこがわかんないからさぁ、『何この言語?』ってな感じで
  ただの丸暗記なだけで面白くないし、発音なんか電子辞書頼みだからな」

 「そうなんですよね、私も先生が教科書ぐらい読み上げてくれても良いと思ってます」
 「でも、それで高校に行けないって話でも無いんだからな、どうにも適当なんだろう」

 「私は、話せた方が良いと思いますよ」
 「へぇ〜、ほたる姉、海外旅行とか行きたそうだな」
 「ゆうちゃんは興味ないんですか、外国とか?」
 「全然(キッパリ)」
 「ははは・・」


 どうも蛍は話し出すと、途中で、聞きたい方向があっちに行ってしまうようだった。
 この時も結局、その凸激の計画というやらについてツッコんだ会話には至らなかった。

 ‥どうにも凸激とはいつもこんな調子だった。
 聞きそびれた分は、あとの空気とニュアンスからの思い込みで補うしかなかった。


 しかしこの時ばかりは、考えを巡らせてみたところで分かろうはずもなかった。



1-3)3

 人を好きになると言うことは、その人の成りと好みなどを‥点から拾ってきて
 自分でそれらを組み立てて楽しむ行為だが、その反対に、
 好きになって貰いたい場合には、自分の本音の所を常に分かっていて欲しいという願望に切り変わる。

 つまり

 ひっくり返せば、本音が無かったのなら、好きに成ってもらえないと言う次第にも成る。
 ‥そこの本音が、相方の再構築したハリボテ像と同じであって欲しいなどと言うのでは至極残念だ。


 相性という奴は、そこのハリボテ像と日常の取り組みが似通っていれば問題がないという見方だが
 しかし所詮、そんなものはあてにならない。
 程ほどに相手の本音の部分を聞こうとする姿勢がないのでは、
 それこそハリボテ像と過ごすばかりの息苦しさに煮詰まることになるのである。


 ‥とはいえ、知らない方が面白くなる結果オーライもあるだろう。

 本音を聞こうとしない姿勢には、
 そんな‥結果オーライこそが「愛」などとした思い込みが有るのかも知れない。


 あなたは、その人の結果オーライを愛するのだろうか?
 それとも志を愛するのだろうか?

 ‥しかしながら、志を持たぬ者には、結果オーライすらやって来るまい。
 愛とは、つまり‥志の果てに敗れたとて受け止めることができるかどうかに尽きようか‥

 それゆえに
 志を知らなんだら、尚のこと‥敗れた時、相方には、ただのヘタレと見られるだけのことである。
 そこを避けたければ、志から入るとした向きも又有ることになる。

 何はともあれ、相手の志を、自分の胸の内に据え置かないというのでは、
 始めから受け止める気概に満ちてあるか、それとも、受け止める自信が無いかのどちらかだ。
 相手の志を知っていれば、その相手が挫けそうでも、針を戻すという手伝いもかなうだろう。
 しかし、知らなければそれっきりにも陥る。
 ‥どこで愛たる形を発揮できるかという意味でも、互いの意図を確認しておくことは大切だ。


|然したるも前提遥かまだおぼろ‥語るに及ばず吾が志

posted by 木田舎滝ゆる里 at 00:56 | Comment(0) | ネタ文学 | 更新情報をチェックする
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