↓3)改稿.2016/05/10...20160411...
|1・2・3‥右に回して鳴る声に胸を大きく‥なぞらう不思議?
夏休みの朝、その都度ラジオ体操を終え、
ハンコを押して貰うと、凸激はチャリにまたがりダッシュで帰った。
なにか誘われようとも、
「勉強があるから」と言うだけで、有無を言わさずそれは成り立った。
‥れんげも蛍も、それが、男子の行動としてなのかそれなりに不可解だった。
|カブトムシ暑さ湧け立つ誘う山 遊べばその分負け戦
里の朝の道のりを一人チャリで飛ばしていると、どうしたって気持ちが良い。
しかしだからと言って、のんびりしていては、気温が上がりはじめて勉強がしんどくなる。
夏の生い茂った山々の青深さが目に入って来るも、そこそこに切り上げなくてはならない。
‥朝のラジオ体操通いという奴は、この夏の凸激にとって、実に中途半端なものだった。
1-3)1
|蝉が鳴く遊んでくれと泣き止まぬ 木立を見上げ夏雲を見る
自宅での夏休み学習という奴は、校舎でするのと比べれば、実に味気ない。
とはいえ、どうせ遊び相手など居ないも同然だった。
教室に居たのならそれはそれで別だろう。でも、どうしてわざわざ女子の所に出かけるだろうか?
‥それはそれで、凸激としては、都合が良かったのかも知れない。
|風鈴が外で涼めとせき立てる ページ踊らすなバカ扇風機
|これほどにたらたら放つノート汗 あちーぞあちーぞクーラー欲しい
暑くなり出すとどうしても風が欲しい。
でもだからと言って、扇風機を回していては勉強にならない。
勉強する為の本やらノートやらのページがぺらぺらと飛散してしまうのだ。
‥やりにくいったらそれはない。それだけの理由でクーラーが便利という実際に思い至ったのだった。
|水をやる身体に与えもう一杯 夏暑し蒸し蒸し果てしなし
‥夏休みに入ったと思った途端に、こんなにも暑くなるとは‥
これなら分校の校舎の方がよっぽか涼しいのではないのかと思うも
バスに時間を合わせるのも大変だった。給食も出ないのだ。
でも‥たぶん校舎には鍵は掛かってなどいないのだろう。
‥行っていけないことはない。凸激はそう思った。
「それなら、分校のプールに入りながら
プールサイドに勉強道具を置いて、やるのも良いかもな‥
それだったら分校に泊まり込みの方がずっと気が利いている‥
となると食料の確保は、学級菜園でそれなりに作っておく‥
水はダメって事は無いと思うが、電気にガスは使っても良いものなんだろうか?
さすがに、生徒がひとりで煮炊きをしてます‥なんてのはどうなんだろうな?」
なにやら休憩気分で、
凸激は、これは来年以降に向けたアイデアだなと考えを巡らせた。
‥先生にそれを認めさせるにしても、この夏が肝心だと思えば、再び参考書に目を走らせていた。
1-3)2
‥そんな凸激のなんの変哲も無い夏休みが、一週間‥十日は過ぎただろうか
暑さに耐えながらの家での勉強で、凸激は意外に疲労が溜まっていた。
なにしろ、就寝しても寝苦しく、眠れたようでいて眠気が取れていなかった。
凸激は、神社に着くと我慢できずに少し寝るかと
鳥居の前に胡坐を掻いて座り込み、そのまま背をもたせ掛けた‥
どうにも気持ち良く‥いつの間にか、そのまま深く眠り込んでしまったのだ。
そこにれんげがやって来た。
「なぁ☆ッ、とっつんがこんな所で寝てるのーん☆」
そんな凸激の姿は見たことがなかった。
それも夏休みだというのに、どうしてこんな神社の鳥居の所で寝ているのだろうか?
そんなに眠いのなら家で寝ればいいと思った。
「‥とっつんは、夏休みだというのにお昼寝もしないのだろうか?」
れんげはその不可解さに誘われて、しばししゃがみ込み‥凸激のその寝顔を真正面から見つめた。
見てれば見てるほどに何やら、意欲に駆り立てられてくるこのほとばしりを
どうしたら好いのか‥れんげには思いつかなかった。思いつくとすればイタズラぐらいだった。
そこに蛍が母を伴ってやって来た。蛍の母はこの夏、ラジオ体操の父兄側の管理責任役だった。
「れんちゃんおはよう、どうかしたの?」
「あ、ほたるん、にゃんぱすー(立ち上がる)」
「ゆうちゃんものの見事に寝てますね‥どうしてまたこんなところで」
「ウチが来た時にはすでにこうだったん
それで、これがどうしたわけか‥
見てれば見てるほどに、何かこううずうずして来るのんな
ほたるん、こんなときは、どうしたら良いと思うん?」
「こういうときはこうするのが一番だと思いますよ」
そう言うと蛍は、パシャリと写真を取るべく自分の携帯端末を取り出した。
‥それはそうだろう、滅多にこんなチャンスはない。
それを見てれんげもその写真が欲しくなった。
「な、ほたるん、それ、姉ねえのパソコンのウチのメールアドレスに送って欲しいのん」
「好いですよ
それじゃ、私もあとでれんちゃんちに行って、プリントして貰おうかな」
「ほたるんも、それでイタズラ書きするのん?」
「・・・そんなことしません、れんちゃんって大胆‥」
‥そんなところで
蛍の母が、ラジオ体操を催促する声を掛けてきた。
三人は、凸激を起こすべきかどうか思案したが、
蛍の母は自分もラジオ体操をしてみようと考えていたので、ちょうど良いとばかりに
そのままに置かれた。
蛍の母は、仮に小学生とはいえ男子の前でラジオ体操をするのもちょっぴり嫌だったので、
この時とばかりに、待ってましたと張り切ったのだった。
‥で、終わっても
まだぐっすりしていた様子に、凸激はどうにも捨て置かれてしまっていた‥
1-3)3
|眠りこけて炎天の下、ラジオ体操‥誰も居らずに昼時!?
凸激が起きた時には、ほとほとに気温が上がりはじていた。起きたのはそのせいだった。
でも‥なぜ、起こして貰えなかったのかに凸激は怪訝な気持ちをよぎらせたものの、
なんとなしに自分のカードを見てみれば、今日の日付にハンコが押されていた。
「‥まぁいいか」と思った。
‥その帰り道だった。
|汗人や ぶ厚き夏のまだ続く 野良に繰り出す容赦なき熱き
いつもとは違う時間帯の景色が目に入ってきた。
何となく忘れていた気持ちがほとばしった。
さぁどうする?‥たまにはぶらぶらしてみるのも有りだろう。
‥とはいえ、その前にまず飯を食わねばバテてしまうというものだった。
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