2016年04月15日

【二次創作】のんのんびより 20 「夏休みの宿題は?」と志の巻

↓3改稿.2016/05/11...20160415...

 夏休みも終わり、今日は二学期の始業式である。
 分校通学のために、朝のバス停にれんげがやって来ると
 何事も変わりなく凸激がベンチの真ん中に座って電子辞書を触っていた。


 「にゃんぱすー」
 「(ああ‥)にゃんぱすー」

 相変わらずというか‥凸激の朝の挨拶は素っ気ない。
 ‥とはいえ、たまにではあったが、「にゃんぱすー」に「にゃんぱすー」を返すのが凸激流だった。

 挨拶うんぬんよりも、どうにもこの時間の凸激は、
 なにか話題を付け足さないと、話しに合わせてくれそうにないのも、いつものことだった。
 ‥そこで月並みではあったが、れんげは夏休みの宿題について聞くことにした。


 「とっつん、夏休みの宿題終わったのん?」
 「愚問だな」


 凸激の返事は、これまたぶっきらだった。
 れんげも久しぶりの朝の感覚に
 その気になって、敢えて、愚問の意味を電子辞書で確認してみた。



1-3)1

 ぐ‐もん【愚問】くだらない質問。
 ‥とあった。

 つまり、とっつんにとって

 小五の夏休みの宿題など大した課題ではないと言っているように思えた。
 確かにそうだろうが、でも、それはそれで‥どこか少し引っかかる物言いに思えた。
 ‥そこでれんげは、質問の角度を変えて、凸激に再び同じ質問をした。


 「じゃ、自由研究は何したのん?」
 「中1の勉強だ」


 物は言いようだった。最先端の現場で言えば、それは確かに探求の範囲に入る。
 でも、それはそれで、レーポートにまとめないと宿題をやったことにはならない。
 ‥まさかと思って、れんげは続けて訊いた。


 「じゃ、自由工作は?」
 「中1の勉強だ」


 ‥それはちょっと無理でしょう。
 れんげには、凸激が夏休みの宿題をやって来ていない態度丸出しに見えはじめた。



1-3)2

 「・・・夏休みの日記は?」

 「あ、あれか‥
  あれはせっかくだから、それなりに思い直して、俺のその日に詠んだ日々の短歌を並べといた
  小学生のどうでもいい夏休みの日常をほじくるより、短歌の方がずっと気が利いてるだろう
  文科省だってどの先生だって文句は言うまい、まぁ自由工作と合わせてセットでも通るかもな」


 「(なん☆)・・・・」

 れんげは、凸激のその物言いに呆れたものの、
 何やら負けたような気持ちに誘われた。と同時に‥
 夏休みの宿題をそんなにも自由に、歪曲して、解釈を変えてしまっている発想が、
 何よりも衝撃だった。

 ‥なにしろ、担任は自分の姉である。
 姉ねえの夏休みの過ごし方を思うにそれもありかもと思わざるを得ないのだ。

 れんげはそんな自分の夏休みを回想しつつ‥いろいろな意味で呆然のまなこになった。

 それもそう、変わり映えのない夏休みに、もっと何かしたいと感じてもいたのだから‥
 「どうせなら先に教えてくれれば好いのに‥」と、ちょっと妬(や)けた。


 「うん?、どうしたれんげ、時間が止まってるぞ
  なんなら詠むか?、俺の短歌日記‥」

 れんげはただ頷いて見せた。
 その返事を見ると、凸激はランドセルから一冊のノートを取り出して、れんげに差し出した。



1-3)3

 れんげが凸激の夏休みの日記もとい短歌日記を読み出そうとしたそこに、
 ちょうど蛍がやって来た。
 蛍は、夏休み明けで充電バッチリのご様子だった。

 蛍もれんげと一緒になって、その凸激の短歌日記を読みはじめた。

 二人して、凸激のその夏休み最後の日の歌を目にして絶句した。

 凸激はこの夏休みの宿題を放棄したと記している。
 しかも歌の中にも‥そのままにだった。


 そして、それはどうやら一穂の居眠りをどうにかする為の何かという事のようである。
 でも、二人には、
 夏休みの宿題をやらないことと、一穂の居眠りとどう関係するのかが
 まったく以て理解できなかった。

 「それって、善いことなのだろうか?」

 しかし、凸激がこのあと何をどうするのかに注目せざるを得ず‥
 看過にも二人は、
 黙って様子を眺めてみようということになった。そっちの方が面白そうだった。
 ‥でもだからといって、凸激がどれ程に中1の勉強に取り組んだのかは、判らないままだ。


|仕上がりは独りで為らぬ志 ご覧あれこそ恥ぢずの精神

posted by 木田舎滝ゆる里 at 16:09 | Comment(0) | ネタ文学 | 更新情報をチェックする
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