↓2)改稿.2016/05/17...20160424...
ー 四月。れんげ小六、凸激中一 ー
れんげと凸激の仲睦まじい(?)生徒二人で通う分校生活が始まった。
朝のバス停から一緒、教室でも一穂が寝落ちしている時間もまさにそれ‥
ほぼ毎日が二人きりになるのだ。
意識しない方が不自然といえば不自然に思える流れだった。
始業式&入学式のその日の朝、飼育小屋の世話を終えると
れんげと凸激は、教室に戻るのも息苦しいとばかりに
校庭の鉄棒に寄り添いながら、しばし、のんびりと春の空気を吸うことにした。
すっかり青葉ではあったが、
桜の木の近くで過ごすことで、蛍が居なくなった気持ちの名残を味わおうとの阿吽でもあった。
春の日射しの下、
おもむろに、れんげがため息をついてこぼした。
「ウチ‥とっつんが居てくれて、ほんとによかったのん‥」
普通に聞いていると、それは意味ありげに聞こえてくるが
凸激は、達観した風だった。
「‥ああ、わかるわかる
俺が居なかったら、れんげ
今日から4年間、それこそ独り、雨ニモマケズの生活に突入だったよな
朝はひとりで教室を開け、昼は姉の遅刻を横目で蔑み、夕刻まで姉の居眠りを見て堪える‥
考えただけでも窒息しそうだもんな」
「そうなんな、とっつんの居てくれたお陰で、それも一年程で済むん
でもん‥その一年を考えるとなん、どうしてもウチ、耐えられそうにないん
‥そこで相談なのん、とっつんには、ウチのために一年ダブって欲しいのん!!」
「・・・れんげ、お前それ、本気で言ってるのか?」
1-2)1
凸激には、れんげが何を言い出すのかと思えば、ビックリだった。
それはそれで、こいつはどこまで考えたのかを確認してみたくもなった。
一方で、れんげは、はじめから答えが見えていた自分と苦悩しているようだった。
「ふっ、やっぱりダメなんな‥」
「ダメとかそういうレベルの話で考えるな、いいか普通になってよーく考えて見ろ
ダブった分校生を世間がどう見るかだ‥
俺が言うのもなんだけどな、
‥よほどの馬鹿か‥病弱したか‥のどちらかだろう
そんな奴が高校に行ったとして、まともに友達できると思うか?
普通にそこにあるイメージには厳しい所がある。そういうものだぞ」
「そこは大丈夫なのん、ダブれば中学生でも高検を受けられるん
受かれば、それを自慢に高校生活もバッチリなん」
「そんなわけねーだろう、それはそれで変な目で見られるだけだろうし
大体だな‥れんげ、立場逆にして、すすめられるのかよ?
花の女子高生生活はどうする?
ダブった姉ちゃんともなると、クラスメイトは全部年下だ、ちぐはぐすぎるだろう
多少勉強できたってな、進路で見くびられかねないとも限らないからな
同じ年齢同士なら気にならないことでも、
一つ上なのに‥なんて空気が漂おうものならしんどいだけだぞ
‥そうやって、考えていくとだな
れんげのそこの事情に同情したってな、世界で一番に無駄な同情にしかならねぇってことなんだぞ」
「なぁぁー☆!!、世界で一番に無駄な同情なん‥
(そこまで言われてしまったん、これはもう、残念な一年間として諦めるしかないのんな‥)」
「ああそうさ、世界で一番に無駄な同情だろうな
仮に、それだけの無駄に付き合うんだったら
それこそ、れんげは俺になにをしてくれるって言うんだ?」
「え?え??‥
とっつん、なにって、なにん??」
「なにってなにじゃないだろう
れんげのそこの同情に応えるともなると、それだけに俺の人生を拘束する結果をもたらすんだぞ
仮に、高検受かって、そのまま大学を目指して受かったとしてもな
お前だけ花の女子高生で思春期満喫してますってのでは、釣り合いにならないというものだ
だから、そこの穴埋めをどうしてくれるんだって話にもなるんだよ
‥さらに、第一志望に落ちちまったともなれば、尚そうなってくる話だぞ」
「・・・・」
れんげは、その凸激の言いっぷりに、それもそうだなと思った。
でも、それはそれでどことなく、頬が紅く染まっていくような話にも思えた。
‥というか、それ以外になにがあるというのだろうか。
‥凸激は自分に気があるのだろうか、それとも、ただの例え?要求?
「・・イヤン♪・・とっつんて、エッチなのんな‥」
「エッチもスケベもないだろう、俺たち、ただでさえ極まっちまってる分校生で
いろんな人間の顔ぶれってやつを、知らないままなんだぞ
それを知らないまま、ドロドロになりかねない選択肢を求める方がどうかしてるだろうに」
ドロドロ‥まぁドロドロとしか表現のしようはなかった。
分校で出会って、一生そのままに付き合い尽くすという流れ‥
世の中には、様々な選択肢が溢れているだろうはずなのに
どうしてそこを前提に、青春時代を経なければならないのだろうか?
なにもそんな意味でダブって欲しいわけでもないのに、
‥気持ちを打ち明けて、よくよく考えていくとなぜかそっちの流れになるのだ。
凸激の言い分が的外れに思えない分、れんげにしても、どうしてもまったくその通りに思えた。
‥それはそれで、人生の流れとしては、何かがねじ曲がってしまう感覚がどうにも腑に落ちない。
そこで
どうせ二人しか居ないし、他に誰も聞いていないし、相手は凸激だし‥
だから、れんげはそこを女子として聞いてみた。
「・・・そんなら仮に、とっつんは、ウチでも好いのん?」
「仮にか?‥
仮にそうだな、お前んちって農家だし、跡継ぎまだどうなるかわからないなら山付きだし
その路線で考えれば、都合のよすぎる選択肢というかドツボに填まりすぎな気もしなくもないけど
‥まぁそれはそれで有りかもな。
ここを故郷にするのに異論も無い。俺の将来この土地で農家決定!」
「・・なんですん、それ?
そんなんウチへの愛の欠片も入ってないーん!
ウチの方がまる損しちまいかねませんのーん」
「じゃ、そんな気持ちの欠片にもならないような選択肢に追い詰めるような選択肢を
誰であろうと、相手に求めるなよ」
1-2)2
いつの間にか、れんげは凸激に一本取られていた。
自分の都合で、凸激にダブって欲しいというのは、やっぱり虫がよすぎるただのわがままだった。
‥はじめからわかっていたことだったが
それでもなにかこう、れんげにはモヤモヤした何かを感じざるを得ないのだった。
そう思っていたら、凸激がこう付け加えてきた。
「まぁそれにしても
そうなったらなったで、れんげも無理に今まで通りにやらないで
かず先生に合わせちまえば好いだろう
大体だ、女子中学生が一人だけで、路線バスで毎日通ってますってのは怪しいすぎるだろう
世の中、どこから情報が漏れてるかわからない時代だからな
身の安全を考えても、一時限目は家で勉強をして
二時限目はさすがに姉ちゃんをたたき起こして、かず先生の運転で一緒に登校する‥
そっちの方が無難だろう
勉強にしたって、れんげも俺と同じように、早い段階で中学課程を終えるようにしとけばいいさ
そしたら、全然慌てる必要も無い。高校受験の勉強だけしてればとりあえずOKだ
‥そもそもを反抗期だからと言う理由で、片付けてしまえる年齢でもあるんだからな
かず先生だって、仮に上からツッコまれたとしても、逃げ口上にしてしまえるというものさ」
れんげはそれを聞いて、「へぇー」と思った。
自分一人では、そういう風には思いつかないからだった。
‥凸激の方が、そういう意味では発想というかモノの解釈が達者だった。
相談という相談をしたつもりもなかったが、れんげは自分が何で引っかかっていたのかを理解した。
「なるほど‥んな
もはやそうなったら、旭丘分校も廃校なん
真面目にやっても余計にツラいだけなんな、かず姉に合わせるにしても
そうなる前に中学課程を終わらせておけば、イライラしなくて済むん‥
それなら、ウチも本格的に中学二年までの間に中学三年の課程を終わらせて見せるん!」
|志新(たけはる)の思いはいつも風まかせ余裕を経れば常に風よし
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