2016年08月02日

【勝手句帳】002 28-7-30 静岡新聞掲載分から

向宜詠吟.2016/08/02

|たんぽぽの土手へ散歩の歩を伸ばす  富士宮市・川柳芙蓉
|たんぽぽの土手散歩の歩を伸ばす  手直し


 「へ」と「や」の違いですが、

 「たんぽぽの土手へ」では、どうしたって、まだそこまで来ていません。
 そのタンポポがどうなっているかが描かれているわけではありません。
 つまり、季語としても機能していない中途半端な嫌いが生じてしまっています。
 そこで、「たんぽぽの土手や」とすることで、季語として整ってきます。

 ‥さらに

 「や」としたことで、今から行こうかなという気持ちより
 来てみたあとの気持ちとして表現できるわけですから、
 思ったよりタンポポが咲き誇っていたので誘われて余計に歩いてみたの解釈になってきます。

 ‥どうせ歩くなら、そんな阿吽が描かれていた方がずっと歩きやすいかと。




|春彼岸孫も揃った墓参り  富士宮市・川柳芙蓉
|春彼岸孫と出掛ける墓参り  手直し


 ぶっちゃけた話、縁起がよろしくありません。
 墓前に揃ったのか‥墓中に揃ってしまったのか‥嫌々、ダメでしょう。
 印象としても影を誘います。

 ‥このような場面では、言葉は濁さずハッキリと示してなんぼです。




|大砂丘風も扇いで祭り凧  浜松市・浜松川柳社いしころ会
|大砂丘○○○○○祭り凧


 「風も扇いで」なんてそっくり要りません。中七だけ改めて詠み直して見るべきです。
 まぁ形としては、祭り凧なんですから、どっちに転がっても上がっているイメージです。
 凪いでいない限り
 「大砂丘」と頭に持ってきてるんですから、砂塵と共に舞っている光景が前提です。

 そもそも

 「風も扇いで」って、誰が風を扇いでるんですか?
 凧を扇ぐとは表現するでしょうが、風は気ままに吹いてるだけです。


|大砂丘砂塵に耐えし祭り凧  手直し
|大砂丘砂塵に耐えて祭り凧  手直し

 
 「耐えし」‥なら、その日は、相当な風に煽られていた様子が伝わってくることになります。
 「耐えて」‥なら、砂丘近辺の暮らしぶりが背景にあって、漸く祭りを続けている印象です。
 ‥言葉選びに詰まったら、そこで起こりそうな事情や、暮らしぶりに思いを寄せて見るべきでしょう。




|焦るほど出て来ぬ駄句に目が回る  浜松市・浜松川柳社いしころ会
出て来ぬと焦って駄句や目が回る  手直し


 前後の言葉を入れ替えてみる癖を持ちましょう。
 ‥言葉を掴まんとして、とりあえず単語だけが浮かんでいるなんてことは、よくあることです。
 ‥それをよくよく吟味しないままなんて有り得ません。




|ハッピーな夏ならあとだしジャンケンポン  袋井市・高南句会


 何を言っているのかよくわからない、でもなんか印象だけはむだに好い感じです。
 実にインスピレーションを感じさせてくれますね。

 ‥では、詠んでみましょうか。


|ガリガリ君、夏のとりっこ あとだしジャンケンポン


 ‥好いですね。名句です。こうはなかなか出てきませんよ。


> うた詠み終わります、ありがとうございました。
posted by 木田舎滝ゆる里 at 11:06 | Comment(0) | 名句にポン/2016 | 更新情報をチェックする
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