2016年08月20日

【勝手句帳】005 28-8-16/8-19 静岡新聞掲載分から

↓7)向宜詠吟.2016/08/20

|夕立にはしゃぐ下校児水たまり  沼津市・千本プラザ俳句教室 8/16


 夕立は今降ってるだろうか?、過ぎたのだろうか?
 まだ降っているなら、べつに水たまりがどうのこうの云っても始まるまい。
 ‥こういう時系列への意識が、織り込まれていないのを見てしまうと、どうしてもそそるね。


|夕立や友とじゃれ遇う水たまり


 ‥とはいえ、「夕立や」と一旦切る程度か。
 遇うを使うともはや下校時では無い。その夕立に「いつ」とした制約も無くなる。
 日曜の夕立かも知れないし、夏休み期間中の夕立かも知れない。
 偶然居合わせれば、そのまま遊ぶかも知れないし、そんな最中の夕立が去ったあとの様子になる。

 尤も、居合わせることになったのは、水たまりの方だろうけどね。
 ‥そう考えると、これはこれで、下校時でも通るのである。



1-7)1

|黒南風の土手のぼりくる魚臭かな  沼津市・千本プラザ俳句教室 8/16


 前にも似たような詠みがあったよな。(しかも同じく選者の詠み)まぁ沼津のあれだよな。
 確かに季節的に海の方に行くと、むわっと臭う時がある。よくは知らんが確かに臭う時がある。

 「ここでは、魚臭さと表現されている。漁港の近くだろうか?」


> ハッキリ思うのは、黒南風と表現するのは誤りで、新たに別に季語を分けるべきである。


 ‥調べると、黒南風には、空が曇っている様子が込められている。
 沼津のそれは、何も曇っていることを前提になどしていまい。
 それとも、沼津のその周辺では、そう言っちゃってるのかな。改めて謎。

 まぁそもそもが臭いなんだから「臭南風」だよね。(こっちの方が音数でラクになるら)


|臭南風や土手のぼりきて鼻の奥


 ‥こんな感じか。俺的には煙草より工場臭よりマシだと思うけど。まぁ知らねぇ。



|薫風やただ釣糸を見つめてをり  長泉町・ながいずみ俳句会 8/19


 いやぁ、海の光景ってほんと季語が無いよね。釣りでふと詠みたくなっても季語が無い。
 それはそれだけ、俳句にしても川柳にしても流行っていたのが内陸部だけであって
 ‥浜辺の暮らしに馴染まなかったと。まぁそんな次第の時の流れを感じざるを得ず。


> ほんと、無いならないで、季語を造りましょう。(発掘かな)



1-7)2

|蝉の声写経の筆のゆるやかに  富士宮市・原茜富士句会 8/19


 目の付け所がナイス。だが‥「だから何なのさ」
 写経してるんでしょ、蝉の声に何か同じく通ずるものを感じたんでしょ?
 ‥そこをもう少し掘り下げてみたくなった。


|蝉はてず写経の度に空あらた



 ‥空【くう】ですよ。空【そら】ではありません。
 どのお経を写してるのか知りませんが、人気はやっぱり般若心経かな。

 今日も一日暑い‥だからといって手を抜かず丁寧に仕上げたい。
 それにしても、鳴き止まぬ蝉の声には暑さを醸すと同時に、その絶え間なき様はまさに空だ。
 その果てず姿・勢い・輪廻を受け入れてこそ空なのだ。
 生死一体である形にすでに宿りたるところがあるのだ。
 ならば、常に、新たに挑む姿勢(テーマ)を以て、事に立ち向かうことが大事なのだ。
 ‥たとえそれが地味でマンネリでルーティンに見えようとも。



1-7)3

|昼寝覚め真白き雲のまだ遥か  富士宮市・原茜富士句会 8/19


 「真白き雲」ですか‥悩ましいですね。
 「昼寝」が季語だから「雲の峰」が使えないと‥

 それにしても「まだ遥か」って
 ‥好い感じに想像力をかき立ててるわりには、全体的に意味が見えてきません。残念。

 どうしたって、「まだ遥か」の響きに想像力の主体があるのに、「昼寝」ってなんですか?

 ‥もっとドラマチックに演出しないと面白くなりません。


|昼寝ぼけ雷光見たるその遥か




1-7)4

|ざぶざぶと洗う冷麦窓の風  藤枝市・時ヶ谷明句会 8/19


 「窓の風」‥なんとも置き直したくなりますね。
 例えば「夏の涼」‥でも「冷麦」がすでに季語、しかもお題。悩ましい。


|ざぶざぶと洗う冷麦 宵の飯


 ‥こんな感じに持ってくると、「一杯やるか」の気分にそそられます。
 「窓の風」と押し込んでみても、生活感はさほど滲み出てきません。
 食べ物を詠む時は、是非とも生活感を織り込んで「御賞味あれ」と喉を鳴らせてやりたし。



|冷そうめん喉よく通る冷え加減  藤枝市・時ヶ谷明句会 8/19


 どうしたって、「冷そうめん」と断っているのだから、「冷え加減」などと改めて綴る必要がない。
 ‥まぁ言葉が出て来なかたんでしょうね。では一緒に考えてみましょうか。


|冷そうめん喉ごしよろし昼の水


 「喉よく通る」‥と詠み手が織り込んでるわけですから、
 食欲がそれほどにあるわけでもなし、兎に角‥
 まずは、体力の消耗を解消したい知恵が「冷そうめん」でもあるわけです。

 じゃ、昼時でしょう。

 しかも水分を補給するように済ませたいわけです。
 ‥というわけで、そのままに「昼の水」と織り込んでみました。
 (一気に食した感が、涼しさをさらに誘います)



1-7)5

|熊笹のそよぐ稜線雲の峰  沼津市・千本プラザ俳句教室 8/16
|万緑や渦巻き流る龍王峡  長泉町・ながいずみ俳句会 8/19
|大漁のうわさ浜風ひとめぐり  焼津市・川柳わかくさ 8/19
|長閑けしや水辺の鳥とたはむれて  掛川市・句会あさかぜ 8/19
|紫陽花や米寿の爺にピンク着せ  掛川市・句会あさかぜ 8/19
|槙の木に雀の親子顔を出す  掛川市・句会あさかぜ 8/19
|夏燕釣りする子等を掠め飛ぶ  沼津市・千本プラザ俳句教室 8/16
|ひらり舞ふ朝の挨拶揚羽蝶  富士宮市・原茜富士句会 8/19


 ※著生の好み映えピックアップ。



1-7)6

|山菜が届いて古里嗅いでみる  長泉町・ながいずみ俳句会 8/19
|山菜や古里見える匂いかな  手直し


 ‥届いたとかさ、端折って良いのよ。届いた感を詠みたいんだからさ。

 今時分だったら、それは何も自分ところの田舎に限らず、宅配サービスでいくらでもあるわけだし
 山の駅でもスーパーでも、袋詰めであって、匂いなんて半分はわかんねぇんだからさ
 直売りの八百屋にしたって、山菜はそんなに扱ってねぇだろうし
 ‥そういう部分での社会観察ができていないと、それだけの差が見切れないと。




|頂上で腕組みたり下界夏  長泉町・ながいずみ俳句会 8/19
|頂上で震えてみたり下界夏  手直し


 ‥これは、薄着で登っちまったところ寒い思いをしたけど、下界は暑いままだったと
 そうい言いたいのでしょうか??
 そうならば、腕を組むの意味には他に色々とあるわけですから、表現としてはダメでしょう。




|選挙カー 十九の夏の未知を問ふ  長泉町・ながいずみ俳句会 8/19
|投票日、十九の夏の選択肢  手直し


 ‥「未知」と「道」が掛かっていると
 素直に道の方で好いんじゃないのかと思うわけだが、
 そうすると「十九の夏の道」のイメージがもろになって嫌ったと。それは選挙の響きとは違うと。
 いやだったら、アタマ「投票日」で好いでしょ。(まぁ、キャッチフレーズ過ぎますけどね。)

 ↓どうしてもアタマ「選挙カー」で押したいなら


|選挙カー 十九の夏に問いし声


 ‥お互いに、問うほどのおつむも中身も声もねぇくせに
 何を問われたところで、困っちまうんでしょうけどね。
 景気共々、社会全体でカネ目当てにしか見えないのが残念な夏。

 「そんなにみんなでカネが欲しいんなら、さっさとべーシクインカム始めろや!」




|下駄の音おぼろの路地を遠ざかり  掛川市・句会あさかぜ 8/19
|下駄の音おぼろ路地を遠ざかり  手直し


 「おぼろの路地」の引っ張りがよく分かりません。
 おぼろなのは、聞こえてくる下駄の音の方なのでは?

 まぁそう思えば、「下駄の音おぼろに」の方が適切です。
 ‥その場合は、当人は家の中に居て、下駄の音に興味が惹かれたとなります。


 それとも、引っ越して来て以来‥未だ‥当人、近所の路地の道順がおぼろだったのでしょうか?
 それとも、下駄の主が当人で、訪ねたものの不慣れな路地に臆して引き返したのでしょうか?
 (否、それでは「遠ざかり」とは綴りませんね。「引き返し」でしょう。)

 ‥もしかしてその反対でしょうか?

 知人はいつも下駄を履いている。だから下駄の音がしたので連絡通り遊びに来たものの
 路地の複雑さに臆して帰ってしまったとか。いや、それだったら今ならケータイがあります。
 お互いに持たずの齢でも、自分から外まで顔を出せば好いだけですね。
 (そう考えると、この線は考えすぎでもあります‥膝が痛いから無理とか‥???)


 ‥とまぁ、なんとでも読めてしまいますね。「の」ではじつに曖昧ですっきりしません。



1-7)7

|新茶刈る機械の音の味気なし  掛川市・句会あさかぜ 8/19


 ほうほう、この詠み手は、茶摘み唄が懐かしんでしょうかね。
 じゃ、機械に装置を積んで、茶摘み唄のオンパレードを流せば良い。

 ‥是は何も茶摘みに限らず、すべてに言えることである。

 農作業用の機械に、民謡でも何でも好いから流せるように組み込めば良いんだよ。

 そうすりゃ、ちったぁ気分も盛り上がるだろうし、それだけでも新型だ。
 ‥そう言った農栽培方法もあるんだし。
 ‥でも、それ言ったら、農地に巨大スピカーを立てれば良いなんて話にもなるよね。

 ‥だったらその手のスピーカーにも、緊急放送ぐらい流すようにすれば良い。
 ‥まぁ考え方は様々だろうが、ここでは単に茶摘み唄が懐かしいというだけの話だ。


> うた詠み終わります、ありがとうございました。
posted by 木田舎滝ゆる里 at 15:22 | Comment(0) | 名句にポン/2016 | 更新情報をチェックする
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