2016年09月15日

【勝手句帳】015 28-9-13 静岡新聞掲載分から

↓6)向宜詠吟.2016/09/15

|踏切のカンカンカンカン青田風  沼津市・七草はいかい倶楽部


 ‥こ、これは、あすこにある風景じゃねぇか。暫し呆然。
 青田という季語が今ひとつピンと来ていなかった時間が、随分と悔やまれるな。
 なんかこう日常の光景をもっとそのままに詠めば良いんだと思わせる響き。
 まさに「軽み」のお手本。

 ということで火が付いた。


|青田闇 夜泣きをあやす子守唄
|青田月すくすく寝やるおんぶかな
|青田径ゆずる挨拶いつもの子
|青田雲 見上げて愛しこの里よ
|青田風 想い届けよ八千代まで
|青田波あちらの山のごきげんよう
|青田萌え手入れの旦那ほっかぶり
|青田虹 散らばる山も里一つ
|青田虫いろいろ生きちょる日の温み
|青田鳥かすめ飛びよる影疾し


 ‥青田十句でした。



1-6)1

|夏帽子ぷかーりぷっかぷっか逃げてゆく  沼津市・七草はいかい倶楽部
|開門の朝より溢れ蝉時雨         静岡市・かわせみ北句会
|初秋の空突き上げて足場組む       静岡市・かわせみ北句会
|新玉葱いくつも束ね無人店        静岡市・羽衣俳句会



1-6)2

|感涙が雲となりゆく燧ヶ岳  沼津市・七草はいかい倶楽部

|感涙や青灼くる空 燧ヶ岳


 ※燧ヶ岳【ひうちがたけ】福島県にある火山。尾瀬を代表する山でもある。

 「‥が雲となり‥」なかなかに詩情の視点としては悪くないと思いますが
 それはあくまで自分の気持ちであって、その気持ちが、
 燧ヶ岳に溶け込もうがどうなろうと、第三者視点から見て概ねどうでも良い抑揚です。


> 溶け込むほどにどうだったのか?


 一歩踏み込んで、その時の雲の状況などを織り込ませるべきです。
 ‥だからこその季語なのに、そこもまた無季ですからね。


|灼きり立つ富士の夕染む静堂々



1-6)3

|「昔はなあ」甚平座り直しけり      沼津市・七草はいかい倶楽部


 陣羽織に、準え称して「じんべい」
 さらに‥メンタン切るほどに惚れ込んで、洒落込んで「甚平」に
 そして時が経つにつれて、甚平羽織と相成りましたとさ。
 いやはや‥陣羽織の手に入らない庶民のダジャレと誇りの賜でした。(‥もといだったと思われます)




|十まなこ母待つつばめ軒の下  沼津市・七草はいかい倶楽部

|軒陰にひっそりつばめ十眼


 今ひとつ微妙‥その1
 「十まなこ」→「母待つ五雛」でも意味は通ります。
 それと比べてみた時に、どうしても「?」が思い浮かんでしまうのです。


 今ひとつ微妙‥その2
 「軒の下」と「の」を挟んでは、逆に目立つ場所としての地面付近に思えてしまいます。
 ‥日常的に軒の空間全体を「軒下」といいますけどね、そもそもにして屋根の下端が軒です。


> 屋根の下といったらどこを指しますか?


 屋根裏とも、屋根より下の部分で地面の間の中間とも、まぁ曖昧です。
 「軒下」と「軒の下」を混合してはいけません。

 脇か隅か端か‥「の」を付けたいなら、ここでは「軒の陰」かと。



1-6)4

|校門を出でて一葉の秋と会ふ  静岡市・かわせみ北句会
|校門を出でて一葉の秋拾ふ   手直し


 「一葉の秋と会ふ」‥なんだか変ですよね。

 普通なら、その秋を何気なく拾い上げるはずなのに、手に取ってみようともしない。
 そんな程度の「あ、めずらしく色づいた落ち葉が一枚ありました」それだけです。
 拾うでしょ。実際に拾わずとも、心では拾っているのです。
 拾ってないから「会ふ」と据え置いただけ。それでは‥素通り感ありありです。

 「校門を出でて」‥出たのは児童ではなく先生だったとか、ちっとも面白くありません。
 ‥小学生なら、尚更に、とりあえず拾ってみせとけや!




|胃カメラに異常なしとよ五月富士  静岡市・羽衣俳句会
|徳政令やって来るとよ五月富士   リスペクト


 「う〜ん、悩んじまうよね」
 ハッキリ言って、それのどこに風情があるんだろうか?
 五月富士の晴れ晴れとした様に、自分の「ああ、ほっとした」をひっ掛けただけなのだ。

 ‥ということで、願望を込めて、世情に添って準えてみた。

 (うまいぐあいに俳句にととのうと風情になってしまうという不思議)



1-6)5

|下闇や御廟までのつづら坂  静岡市・羽衣俳句会

|つづら坂 下闇参り息切らし


 下闇【したやみ】‥木が生い茂って日光が遮られるため,樹下がほの暗いこと。
 御廟【おびょう】‥ここでは神社か寺か、参道通いのことでしょう。
 つづら坂‥手っ取り早く言うと、くねるように急に思しき階段の坂道。

 古風に詠み込みすぎていて

 「それの職業か家系ですか?」‥とツッコみたくなりましたとさ。




|すらり立つ観音像や木下闇   静岡市・羽衣俳句会

埋まりげに地蔵の並ぶ木下闇  手直し1
|すらり立つ観音像や廟涼し   手直し2


 ※木下闇【こしたやみ・このしたやみ】‥下闇と同じ意。

 そんな薄暗いところに剥き出しの野ざらしでいらっしゃるのは、
 お地蔵の間違いでは?

 御廟が昏いんだったらさ
 「廟昏し」「廟涼し」と詠んで夏の涼しさを求めた様とすれば良いじゃんか。
 ‥そもそもにして日本の建築はそのようにつくられてきた。


|廟昏し朝のお務め無我の風



1-6)6

|下闇の忍野八海渦はげし   静岡市・羽衣俳句会
|○○○渦巻き湧くる△△△  (○には季語、△には場所を)


 ※忍野八海【おしのはっかい】をググってみた。
 これはようするに湧き水を詠んでるんだよね。(わかりにくい)

 下闇ったて、湧き水の周囲の少しばかりの木が陰を落としてるだけで、
 それ自体は、忍野八海を強調しなくっても、全国的にどこにでもありそうな光景だ。(平凡)

 ‥しかも湧き水自体は一年を通してのことなので
 季語を夏にしぼる意味が、固有名詞との引き替えに釣り合うのかと言えば、もどかしい限りだ。
 「おしのはっかい」に季語入れたら、後なにをおっしゃりたいの?


|逆さ映え忍野八海 青の夏


 どうしたって、湧き水がどうのなんて視界にはおさまりませんぜ。



> うた詠み終わります、ありがとうございました。
posted by 木田舎滝ゆる里 at 16:39 | Comment(0) | 名句にポン/2016 | 更新情報をチェックする
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