2016年09月26日

【勝手句帳】020 28-9-24 静岡新聞掲載分から

↓6)向宜詠吟.2016/09/26

|夏帽子 仔犬みたいにはずみ来る  袋井市・高南句会

|夏帽子 仔犬がくわえはずみ来る
|夏帽子ステップ軽く山の景


 ‥かぁ、なんか初心者の匂いがプンプンしてくる詠みだよね。
 夏帽子の季語は、当人がすでに人に準えた扱いなんだから、仔犬みたいなどと申してはカオスです。
 夏帽子を仔犬が拾ってくる場面ならそれなりに詠みようもあるわけだし、どっちかにしましょう。




|火の粉浴び手筒花火師 仁王立ち  静岡市・しみず川柳かすが

|火の粉交う火山の記憶 手筒富士


 ‥なるほど、ものの見事にそのままを切り抜いとりますな。
 これにて、ピントが整ったので、視点を移相して着想してみました。
 別に富士でなくても良いと思いますよ。地元の火山にちなんで「手筒○○」って付ければね。

 (手筒花火なんて長ったらしいだけだし、場所も分かんねぇし、格好良く詠めねぇし)



1-6)1

|夢運ぶ指で弾いた天道虫       袋井市・高南句会

|「そら行け‥」指で押しだす天道虫


 あーあ、テントウムシに夢ってさ、あの昭和アニメじゃないんだし‥
 平成人はテントウムシをどう見ているのかと思うわけだが‥
 まさに‥植え付けられた感性だったりしてな。

 ‥カブトムシに感じるのはそれとは明らかに違うわけだからな。
 カブトムシには、夏少年の夢という限定が入るが、
 テントウムシにはどう考えてもそこまでの余韻はない。どちらかと言えばチョウに近いかと。

 チョウに夢を抱くにしても、空・鳥と比べたら、それほどのインパクトはないわけで
 ‥具体的に言えば、大志という程ではない。「また会えたら好いね」ぐらいかと。
 ‥もっと具体的には、保護動物を野性に解き放す時と同じ気持ちかと。




|球場の歓声の裂く雲の峰     袋井市・高南句会
|裂くほどに歓声わきし夏甲子園  リスペクト



 詠み句をそのままに味わうと、球場に突然の雷でも落ちたのかと思わなくもない。
 大体だ、歓声に雲の峰をぶつけようなんて視点がよくわからん。やっつけ感ありありだ。
 歓声は、球場に集中しているのであって、お天気なんかそっちのけが相場にある。
 ‥雨降りこみでも、とりあえず、降り出すまで観戦なんだからな。

 (無論、挑戦的に他の視点から挑んでみるのもありだろう‥)



1-6)2

|公園や夏草やわし人やわし  袋井市・高南句会


 「やわし」とは、柔らかしを縮めた表現ではありません。「飢えている」意味だそうです。
 ‥なかなか、目の付け所が細かいかと。




|お見舞や夾竹桃を目に残し  袋井市・高南句会
|訪問や夾竹桃を目に残し   参考


 ※夾竹桃(きょうちくとう)

 「目に残し」の表現が気に入ったのですが、
 よくよく考えてみるに
 お見舞いに来たのに、目的より、夾竹桃が気になりました‥なんて言い含みは微妙です。
 「訪問や」「訪ぬ先」など‥意味合いを微妙に変えて上五に据えた方が嫌味が残りません。
 ‥そちらの方が、機会があったらまたお伺いしたいものだという気持ちが伝わってきます。

 (それがセールスマンだったとしたら、要らぬお世話なんでしょうけどね)



1-6)3

|天竜の漆黒の闇 天の川   沼津市・若草俳句会
|天竜の人里さびし天の川   手直し



 格好つけてもしょうがない着眼なんで、その闇とやらを明かしてみました。




|地図辿る指やみどりの信州路  静岡市・桔梗句会
|地図辿る指やそば咲く信州路  手直し



 地方と言えどもいまや家ばかり、さびれている箇所をみどりと言いけり。
 ‥グーグルマップ見てたって、そんな次第なんだからさ、もう少し色を付けて詠んでもいいっしょ。




|友訪いぬ沙羅咲く庭へ先づ招じ  沼津市・若草俳句会
|お茶会や沙羅咲く庭に友招き   手直し



 お茶会でええやろ、そもそもそれで呼んだんだろうし、他の用なんてどうでもええ感じ。


> ‥場面をベタに詠まずに、見映えとしてトーンを足し算引き算することも大事かと思います。



1-6)4

|尺玉が消えて自分を取り戻す  静岡市・しみず川柳かすが
|吾返る花火の余韻の湯船かな  リスペクト



 「尺玉が消えて」‥って、現場なら大問題だよ。言葉をもっと選ぶべし。
 ‥ということで、場面を変えてリスペクトしてみました。




|各党が花火のようなマニフェスト  静岡市・しみず川柳かすが



 とても好い感じです。(見た目だけは立派&派手だが、後に続かないの意)
 ‥詠み句はマニュフェストだったので誤字を訂正しときました。



1-6)5

|来た道を独り日向で振り返り   富士宮市・川柳芙蓉

|来た道を独り日向で振り返り 何ぞしたきや忘れてもうた



|体力はここまで遮断機が降りる   富士宮市・川柳芙蓉

|体力の不足を思うここまでか‥遮断機降りつ待ちぼうけ



|捨てる物山ほどあって今がある   富士宮市・川柳芙蓉

|捨つる物山ほど越しき今をみる 振り返りたく語れる風に  (るる訂正:2016/11/27)



|八十路坂あれこれ出来ぬ事ばかり   富士宮市・川柳芙蓉

|八十路坂あれこれ出来ぬ事ばかり赤児の一歩偉大なるかな



|前向きに生きてしっかり踏む大地   富士宮市・川柳芙蓉

|前向きに生きてしっかり踏む大地 長くなるほど舗装もガタガタ



|母の日に咲いて匂った花の鉢   富士宮市・川柳芙蓉

|母の日に咲いて匂った花の鉢 ふたたび起こせ温もりの香



|草むしり花と話して時が過ぎ   富士宮市・川柳芙蓉

|草むしり花と話して時が過ぎ 腰を上げては日と話すかな



> ‥どう考えても短歌のノリでしょう。
> 無季と短歌の上の句の途中を見分けられるかどうかが、俳句を理解しているかでもあるわけですね
> 同義的に短歌を理解しているかでもあるわけですが‥



1-6)6

|一瞬の芸が夜空にパット咲き   静岡市・しみず川柳かすが

|一発芸、お茶の間夜空にパット咲き 流れ星ゆえ時の運


 花火を「芸」とは失礼で、どうしたって「技」だし「巧み」だし
 ‥とまぁ、芸に目を付けてリスペクトしてみました。




|伝統の業を龍勢競い合い  静岡市・しみず川柳かすが

|戦国や 花火大会とりどりに竜虎に準ふ気概かな


 これも花火の詠みらしいのですが、「龍勢」の意味と意図が不明確です。

 ※ 龍勢とは、花火ではなく打ち上げる狼煙でした。時節も夏に無いようです。
 花火大会ほどの大大ぶりに打ち放つほどになく、どちらかというとマニアックな催しです。
 祭りとえば祭りですが‥
 季語としての輪郭やボリュームに、特定のイメージが不足しているかなと思いました。
 (2016/10/12、夕方のニュースでちらっと見かけました)


 「伝統の業」と引っ張ると、どうしても「ごう」の意味合いがもたげてきてしまいます。
 そこを煽るかのように、「競り合う」意味合いに見えてしまっては
 ‥どうしたって、戦国の合戦模様もとい気分を誘います。
 ‥まぁ花火もドンパチですからね、全国的に競っているわけですし、そんな雰囲気もあるのかなと。


> それにしても


 「わざ」と「げい」と「たくみ」と何がどう違ってるんでしょうかね?
 「わび」と「さび」と「いき」と「ふぜい」と何がどう違ってるんでしょうかね?
 ‥いやぁ同じでしょう。

 同じ意味でも、響きが違うことで、短歌も俳句も整いに深みが増すのです。

 そこをどう感じて見極めるのかは、その人の感性でしかありません。
 ‥でもまぁ、味わい深くなるように用意されてるんですから、調味料と一緒ですよね。
 ‥ただ、まぶしゃ良いってわけでもありませんので、吟味する癖を付けるように心掛けましょう。


> 料理と同じで、言葉選びでも味付けに工夫をしない人は上達しません。
> 意味は同じだからと、うやむやにやっつけてばかりでは、味わいに深みは追加されません。
> 同じ素材ばかり投入しても、面白みに欠くところも実にそっくりです。
> 素材の持ち味を生かすように調理するのは、日本の心です。お忘れなく。


 でも、残念なことに、否、おもしろきことに、
 調理方法だけは、ありきたりにもお決まりほどにしか無いんですよね。

 だからこそ、単一な調理方法ばかりでは、おもてなしにならないと‥

 でも、結局は、基本を押さえていないと上達しません。
 いいえ、そうではありません。
 素朴な味わいを好まぬ人は、上達続かないのです。そこが基本ですから。
 ‥其もまた日本の心です。お忘れなく。



> うた詠み終わります、ありがとうございました。
posted by 木田舎滝ゆる里 at 02:54 | Comment(0) | 名句にポン/2016 | 更新情報をチェックする
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