↓6)向宜詠吟.2016/10/18
|カラフルな落葉広がる石畳 静岡市・虎渓俳壇
|赤黄と秋に鎮まる石畳 手直し
‥「カラフルな落葉(おちば)」??、さぁ何のことやら‥抽象の感覚です。
そもそも、艶やかさを指したる主役は、どうしたって紅葉であって落葉ではありません。
そこに細かくあろうとすれば、横文字はどうしたって似つかわしくないのです。
ググってみたらこんな画像が‥
毘沙門堂
|赤々や落葉畳の石畳
|踏みし今 秋と奥まる石畳
|去りし雨しけり落葉の石畳
|石畳掃かれても尚 秋の声
|湖の底は空なり秋高し 静岡市・虎渓俳壇
この句を目にして、すぐにPixivで見かけた投稿画を思い出しました。
‥先を越された面持ちも束の間‥
湖面に浮き上がっても、そこにだって秋が在るじゃないかと‥気がつき‥
|湖底から這い出る「ぷはぁ」秋高し
1-6)1
|深閑となりし町中油照 沼津市・きさらぎ句会
|沼津垣 人の通らず油照
※ 油照【あぶらてり】‥うす曇りで風がなく、むし暑い日をいう。(夏)
沼津垣で画像検索
「深閑となりし町中」、沼津市内でイメージすると、たぶん港付近・海沿いかと思われます。
‥それにしたって掴みが弱いのです。
ということで、海岸付近でそれなりに目に付く「沼津垣」に注目してみました。
|帰省して育ちし町を子と歩く 沼津市・きさらぎ句会
|夏○や郷里の○を子と歩く
掴みが弱いと言えば、是なんかべらぼうにそうですね。
帰省したのだから、「育ちし町を子と歩く」のは当然の成り行き‥だからどうしたのかと‥
‥どちらかを削っても十分に意味は通るのです。(とは云え、季語を削っては意味がありません)
つまり、季語の選択がまずかったと
‥仮に季語を夏○とすれば
あとは、手直し例文の「郷里の○」の中に、思い思いに歩いた次第を埋めれば好いと思います。
|色褪せし町の雑踏秋茜 沼津市・きさらぎ句会
|夕日差す○○の土手路 秋茜
※ 秋茜(赤とんぼ)、茜(植物)は季語扱い。一方で、茜雲・茜空は無季扱い。
‥これもそうです。掴みが弱すぎます。
「色褪せし町」とは詠み手の主観であって、抽象であって、選り好みであって
具体的な光景は何らございません。雑踏にしても同じような風合いです。
‥そもそも雑踏の中に詩情を見出さずして、俳句とは云いますまい。
季語を置くだけでは、到底、詩情にはなり難しどえす。
> 「色褪せし」などとぼやいている字数なんてないん!
手直し例文の○○の中には、「下校」「散歩」なんかが手頃に入るかと‥
基本的には例文のように、まずは季語を立たせる言葉を添えるのが基本どえす。
マンガで言えば、キャラが立つということどえす。
‥主役の生き様を描かずに、どこまでもナレーションが続く入りではうんざりですよね。
‥季語が立たずに、抽象染みた響きで固まってしまっても同じです。
> 雑踏を具体的に言い表すなら次の感じかと‥
|夕日背に土手沿い整備 秋茜
|橋辻のしがなき河辺 秋茜
|横向けば踏切越しの秋夕焼
|ガード下抜けてすいすい秋高し
1-6)2
|コーヒー旨し赤とんぼ飛ぶカフェテラス 沼津市・きさらぎ句会
|カフェテラス薫り立つ横 赤とんぼ
‥「コーヒー旨し」とした主観を入れるべきかどうかなのでしょうが
詠み手がどう感じたとしても、季語を「赤とんぼ」に選んだ時点で無理どえす。
|口開き睨む阿羅漢秋暑し 沼津市・きさらぎ句会
|阿吽立つ睨む門前楓ふく
どうにも阿羅漢が主役になってしまっています。季語が立っていません。
阿羅漢の表現を別に置き換えて季語を立たすように探る必要があるのです。
それにしても、「口開き」と上五に置いて、座五に「暑し」では、
‥如何にも厚かましさ倍量と、失礼なだけですね。
|霧襖破っても破っても霧襖 沼津市・きさらぎ句会
|峠道、破っても破っても霧襖 手直し
|霧襖、屏風文化のなれの季語 ツッコミ
※ 霧襖【きりぶすま】‥霧が濃く襖のようにみえるさま。
つまり、襖や屏風に描かれる墨絵の事です。
‥墨絵に描かれているような塩梅の霧が立ちこめている。(さほど風流な表現とは思えません)
句としては面白いと思いますが
如何とも「霧襖」の言葉の意味合いが、
ちっとも自然景としていない言葉なので、「五里霧中」もとい「暗中模索」を匂わせるだけです。
‥そこに酔っては
詠み手自身までが襖の前に坐してあるかのようで、俳句としては落ち着かないのです。
1-6)3
|仲秋や白壁に沿ふ影法師 掛川市・いちご俳句会
|晩秋や白壁に沿ふ影法師 手直し
‥是は、どう見ても「晩秋」の方がわかりやすい趣かと。
|仲秋や熱りしづまる石畳 掛川市・いちご俳句会
|小夏日やまだまだ熱る石畳 ツッコミ
石畳に熱が籠もっているほどに暑い夏だったと。
「そうなんですか‥へぇ」
でも、まだまだ暑いですよ。まるで冬の小春日ならぬ、秋の「小夏日」です。
「秋暑し」なんて表現は粋に思えないので、まぁ詠んでみました。
|仲秋や見守り隊の好好爺 掛川市・いちご俳句会
|好好爺子ら見守りつ秋の辻 リスペクト
日短になり出したので、児童の安全確保なのだと思いますが
涼しくなってきたので、いざ出番と言うことなのだと思いますが
‥「好好爺」を主役にしたければどうしたって、季語の選択が「仲秋」では無理です。
|仲秋や白く灯して塾の窓 掛川市・いちご俳句会
|仲秋や白く灯しつ塾の窓 参考
涼しくなってきたので勉強にも身が入るという意気込みが表れている詠みですね。
そうなると「灯して」の「て」は助詞の意も兼ねてしまうので、切り替えの意としては弱いのです。
「灯しつ」として、気持ちの入れ替えの意をより強意に据えおくのも一つです。
|低気圧去りて仲秋定まりぬ 掛川市・いちご俳句会
|仲秋や刈り入れ来たる日和あり ツッコミ
‥云ってしまえば、「明日は秋らしく晴れてくれそうですね」というだけの詠み。
それをお題が「仲秋」の所をどうにか整えているところが、粋ですが、それだけでは糞です。
秋の晴れ間がなぜ数日毎に続くのかというのも、稲刈りがあるからです。
‥各地で稲の成長にムラがあるからでもあります。
天が稲刈りに気を配ってあるから、そうなるのです。
それを行楽だけに費やすことしか頭に無き今時代のご時世という奴は、
‥実に「なに言うてんねん」と思わざるを得ません。
1-6)4
|雲一つ秋高きこと気づかせる 静岡市・虎渓俳壇
|秋高し雲一つぽつり吾が迷い 手直し
「秋高し」から「秋高き」というように活用させることで季語が死にはじめます。
活用しても活きる季語とそうでない季語との違いや形を考えて読むことが大事です。
‥とくにここでは、まだ「秋高し」の詩情を表現しきれていない手前です。
秋の空はこんなにも晴れ晴れとしているのに
私の気持ちは、なんとあのポツリと浮かんだ雲一つだったのか‥
‥とまぁこのぐらいに整って、詩情として立ってくるのです。
> 文の意はどちらも似たようなモノに見えるにせよ、詩情からしてみればまったくの別です。
‥文の意が見えれば好いとか、景色が見えてくれば好いとか、そう言うことではありません。
あくまで、詩情を描いて整える。そうでなくては詩でも俳句でも何でもありません。
まぁそんなことに余りにも深刻になりすぎては、普段の暮らしに差し支えてしまうところです。
また、詩情にこだわりすぎて、周りが見えていないわかりづらさに陥らないとも限りません。
その辺、頭を柔らかくしてどうでも好いと思い直しておくのも大事なことで、
「スッと入ってくる響きに注目せずして掴みなし」‥そういう事だと思います。
|紙パンツ遂にこの日来た五月晴れ 島田市・さっしょ俳句会
|紙パンツ遂にこの日来た梅雨の入り 指摘
‥どうして「五月晴れ」なんでしょうか?
紙オムツではなく「紙パンツ」です。高齢者用途にしか思えません。
そんなに清々しい日がやって来たのでしょうか?(意味が汲めません)
どう考えたって「梅雨の入り」ですよ。(紙パンツの用途だけに梅雨入りどえす)
|大花火大人も子供に戻る庭 島田市・さっしょ俳句会
|大花火大人も子供の顔の庭 手直し
「子供に戻る庭」、ぱっと見なにを云わんとしているのかがよくわかりません。
詩情としては、定番にも「子供の顔」ですよ。他の選択肢なんか考えられません。
(‥童心に返るもありますが、ここではすこし違うかなと)
良いですか、自由に詠めるとしても、詩情に適った余韻には一定の許容しかありません。
言ってしまえば、お約束の世界です。息苦しささえ伴うでしょう。ある意味で不自由です。
‥でもだからこそ、詩情に適った言葉が生まれてくるよすがでもあるのです。
‥言葉が改まると、風景も改まります。そこに自由を見出すのです。
詠むにしたところで、視点が自由に動かなければ甲斐無しです。
言葉が生まれてこなければ、いつまで経っても同じ視界のままです。
気持ちに変化が訪れないにしても同様です。
‥そのどうしようも無さを「侘び」「寂び」と言うわけでして、留めたいとの念いはむしろ逆です。
> 移りゆくことをむしろ肯定しているのが、「侘び」「寂び」にあるのです。
‥でもだからと言って、積極的にそれを望んでいるわけではありません。
そりゃもう、自分が新しきを適度に望むが如しです。
そこの歩みの歩幅が整っていればこそ、「侘び」「寂び」をしみじみと思わざるを得ないのです。
歩幅がまったく合わないのはただの悲劇です。(人によっては喜劇なのでしょうけど)
そのような片寄りを嫌うのもまた「侘び」「寂び」の世界観です。
‥言葉としての整いが誰しもにわかるようにあるべきなら、歩みが共に在るべきと願うが信条です。
私心に浮かれ始めた瞬間から「侘び」「寂び」から弾き出されるのです。
(詩人としては、調子よく上手に詠めなくなるということですね。何事にも通じる心構えです)
1-6)5
|青田風一二の三で夕陽落ち 島田市・さっしょ俳句会
|青田泥一二の三で夕陽落ち 手直し
是はどう考えても、「青田風」ではなく「青田泥」にしないと整いません。
どうしてか‥泥にはまって転んだんでしょ。もしくは、田んぼのどこかで踏み外したかです。
‥にしても「一二の三」がよくわかりません。
印象としては、1人で作業をしていたわけでなく、何人かでやる作業の途中だったかと思われます。
それとも何かを持ち上げようとして足をすべらせたという事でしょうか?
|焼鳥屋ビールに西日詰めている 島田市・さっしょ俳句会
|満席や西日を詰めて泡ビール
西日が直にビールに当たっていては不味く感じる所ですが、ニュアンスは明らかに異なります。
そんなところで、「西日を詰める」の言い回しにそそられました。
そこで、狭い店の中の席を
詰めて譲り合う居酒屋の付き合いという所に引っかけてリスペクトしてみました。
「西日」と「泡ビール」が好い感じにその日の疲れを語り合っているかのようです。
|炎天下球児ら声を出し切って 島田市・さっしょ俳句会
|グランドや 球志ら「うぇーい」秋高し
「球児」という表現は、中高野球には似つかわしくない‥
という思慮から、球志【きゅうじ】と当て字にしてみました。
‥甲子園を目指すという意味になります。(野球部員は大方そうかと思います)
1-6)6
|こぼれ萩 郡上踊りの下駄の音 掛川市・いちご俳句会
|園児ほる芋ころころ笑いもころころ 島田市・さっしょ俳句会
> うた詠み終わります、ありがとうございました。
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