2017年02月19日

【勝手句帳】081 29-2-11 静岡新聞掲載分から

↓4)向宜詠吟.2017/02/19

|列なして一打の鐘を待つ冴えた星座の下         浜松市・槙の会

|さぁ響け、列をなして待てり除夜の鐘の一打
|いざ一打、星座の下に余韻たれ吾が元日の祈り


 ‥是は自由律ですね。槙の会は自由律のようです。

 着眼は好いと思いますが、リスペクトのように
 もう少し焦点を自分の順番が来たときに絞ってみるべきだったのでは‥

 カメラで撮るにしたって、そりゃ自分の番が来てからです。

 待ち順の時の星見がどうのなんて推敲途中の余韻です。
 自由律なんですからね、尚のこと、焦点の着目が欠かせません。




|立ち位置はこの星の上冬銀河              静岡市・のぼる句会

|立ち位置は氷上の湖 赤きオーロラ


 ‥ネタの詠みは、どことなく俳句甲子園ぽい装いです。
 どうせなら、もっと具体的にと思うところを自由律で表現してみました。



1-4)1

初めての雪目で追う窓辺の              浜松市・槙の会

|初めての雪に小猫の目が追う窓辺


 ‥なかなかかわいらしい光景です。
 さて、細かいところの直しになりますが
 ここが自由律での癖の善し悪しになるかと思います。


> 「初めての雪」で句切るのか否か?


 ‥句切ってしまうと、そこに注目している対象が子猫から詠み手に変わってしまうのです。
 でも、それはそれで変です。まぁ雪が降らない土地であったなら斯様にも成り立ちますが
 「初めての」ですからね、まずは「猫」と書くよりは、「子猫」と置きたいところです。

 ‥「猫」は二音、「子猫」は三音
 なんだんだで、句切らない方がしっくり来るように思います。




|ガラス戸の冬雲をぼんやりとこの自由          浜松市・槙の会

|ガラス戸越しの冬雲とぼんやり


 ‥着目は、窓から見えている冬雲です。
 それを「ガラス戸の冬雲」としては、遠近感が物足りません。

 ここは「ガラス戸越し」と示して、遠近感を際立たせてしまえば
 「この自由」も削れる筈です。


> ‥そもそも、ガラス戸越しにぼんやりしている程度で「自由」とか、大げさです。片腹痛いです。



1-4)2

土手に積もった雪かき分ければタンポポ咲いている    浜松市・槙の会

|雪掻き分ければそこにタンポポ


 ‥自由律ですからね、「土手」の説明も要りません。
 「咲いている」も要りません。


> もっとシンプルに詠んでしまえと云うのが、そもそもの自由律かと。




|背丈こしたこの木婆が蒔いた一粒の          浜松市・槙の会

|背丈越しけり蒔いた一粒の


 ‥是も同じですね
 自由律であれば、自分が蒔いたなどとした説明は概ね不要です。
 どちらかといえば、ここでは時系列をハッキリさせておくべきかと。

 あと「実」とするか「種」と置くかですが、「実」ではどこか変です。

 着目は、あくまで背丈を越す程に成長したという事ですから

 「種」なら、何年も経てようやく成長した味わいになりますが
 「実」ではどこかピンボケです。


> まぁ何を植えたのかは判りませんが、判らないからこそ
> 想定内に収まるように言葉を選ぶべきです。



1-4)3

|残雪の光の中にみな溺れ                静岡市・かわせみ北句会

残雪は問う照らす光にみな春に酔ひ溺れたれと


 ‥「みな溺れ」ってね、どうにも踏み込み過ぎています。
 意味合いとしては、手直しの自由律に置き換えた通りに思いますが

 「残雪」ともなれば、まだまだ「雪崩」をイメージできてしまう時期でもあるのですから
 殺気が籠もっているかのような気配は、どうしたっって宜しくありません。




|雪折の枝の重さを闇に聞く               静岡市・かわせみ北句会

|遠吠えやドキッと雪折闇に聞く 奥まる山の囲炉裏の憩い


 ‥雪がしんしんと続いて居り
 ‥雪の重みに耐えられずに枝の折れる音が闇に聞こえてくる

 雪国の風情です。雪折(ゆきおれ)が季語で、その中に
 「樹木が降り積もった雪の重さに耐えかねて折れること」の意が込められています。

 ネタの句は、中七がそのままに不用です。

 ‥江戸の頃にタイムスリップして、リスペクトしてみました。


> 今晩は狼の遠吠えが良く聞こえるな(それだけに雪も止んでいるのだろう)
> そこにちょうど雪折が小屋の近くで響いたので、まさかと皆一様に緊張した
> そんな驚きも囲炉裏の前では笑い話になってしまうものだなぁ



1-4)4

|凍滝仁王立ちなり奥天城               静岡市・SBS学苑パルシェ教室俳句

|凍滝仁王立ちなる奥天城 寒うて身震いひと風呂の甲斐


 ‥「凍滝」を仁王立ちに見立てているのか、自分が仁王立ちに見上げているのか
 どうにもすっきりしません。その原因は「の」です。

 そこで「や」で句切ってみれば、

 そこから焦点が「奥天城」に向かうことで、山全体が仁王立ちの様相に思えてきます。
 ‥それほどに冷え込んでいるとして、景色全体が引き締まるのです。


> 解っているつもりでもこれほどのスケールの差が感じられる「や」に、驚きを隠せません。




|鍔広の帽子のや春隣                 静岡市・SBS学苑パルシェ教室俳句

|春隣り鍔広帽のにをり 飛び出す蛙暖かきかな


 *鍔広(つばひろ)‥野球帽みたいな帽子のつば


 ‥ネタの句の「影」の使い方ですが
 どうしたって、帽子を被っているのか、置かれていたのかが不明です。

 ここでは、どうにも曖昧にするしかないのですが、
 曖昧にするにしても、まだ幾分解りやすくする上で余地があると云うことです。



> うた詠み終わります、ありがとうございました。
posted by 木田舎滝ゆる里 at 07:35 | Comment(0) | 名句にポン/2017前半 | 更新情報をチェックする
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