2017年03月06日

【勝手句帳】085 29-2-28 静岡新聞掲載分から

↓6)向宜詠吟.2017/03/06

|寒空に身震ひひとつ月歪む         浜松市中区萩丘

|寒空や咳が絡んで月歪む 寝付けず鼻垂るマイコプラズマ


 ‥「寒空」「身震い」「月歪む」、攻めてる感触が面白い。
 でも、「身震い」では月が歪んで見えるまでには不足しています。

 ということで、マイコプラズマの登場です。
 ‥あのもどかしき風邪をこのように表現できるとは!(驚いた)


> ‥にしても「寒空」では、外で寝ているような雰囲気もありますな‥


 (やべぇ‥マイコプラズマなんて風邪があると、外に放り出されたら地獄度増大じゃねぇかよ)
 (待てよ、アレは乾燥が苦手そうなんだから、外ではそうでも無いのかな?)
 (その手の暮らしの実態調査をすれば、真実判明だな)




|ハイヒールつと来て買ふや泥大根      沼津市・潮音水曜句会

|ハイヒールつと来て買ふや泥大根 舌は確かだこのピン札は


 ‥なかなの着目に、思わず引っ張ってみた。(おもしろい)

 ハイヒールのイメージにも色々あるが、偏らず腐らずに引っ張ってこうなりましたとさ。
 チャッカリ自分所の商売も自慢しちゃうと‥まぁそういう流れだったと。



1-6)1

|冬うらら数多の漁船滑りゆく        静岡市清水区興津中町

|冬うらら数多の漁船滑りゆく 銀糸を引けと海も笑むかな


 ‥よく整っています。(平凡のように見えても心地よき場面)




|裸木の蒼天持ち上げし力瘤         牧之原市大江

|裸木のを持ち上ぐ力瘤 酋の木なくば里山も無し


 *オーク:日本名=落葉樹をナラ(楢)、常緑樹をカシ(樫)と総称。
 *酋(おさ)の木と書き、これは壺から酒の香気がもれる様を表す象形文字で、
  酒づくりの長(おさ)や一族を束ねる長のこと。


 ‥どのような裸木(はだかぎ)なのかを考えること、ナラしか無さそうです。
 それにしても「裸木」は冬の風情なのに、「蒼天」は夏の風情です。
 どうして、入選に入った?(まぁ着目には賛成するけどね)

 ここは、異なった季節の言葉が盛られるよりは、季重ねの方が無難でーす。



1-6)2

|鈴なりの絵馬人間の弱さかも        富士市厚原

|鈴なりの絵馬に見えしは弱かれど 己のことばかりなら尚なり


 ‥やだやだ、こういう勘違いの向きの詠みって

 祈りや願いは、弱さではありません。知恵です。暮らしです。
 智慧なり共生なりを前提とせず、ただのすり寄りこそが「弱さ」です。

 ‥どうしてそういう見方のままなんだ??

 明らかに言葉の不足がそこにあるだろうが、どうして、これで佳作に入るの?
 川柳としても、片目のレベルっすよ。


> でも、良く考えてみると


 ‥絵馬にカネを払えるのは、それなりに裕福な連中だと思います。
 で、そんな育ち向きの連中程、これな習慣に入り浸っているわけでして
 大人になっても同じにあるわけですから、会社経営にしても行政運営にしても
 それの上層が、言わずと知れたただの神頼みだけしかねぇということになりますと、
 社会の程度が知れるというものです。

 そうでないということを、願いたいところですが

 半分半分だろうと云う次第は、想像に難くなく‥
 (まぁ半分は言い得ているという事でも有ります、あしからず)




|ヘディング気負いて跳ねし初御空     静岡市清水区三保

|ヘディング気負いて跳ねし初御空 ゴール前での肌競り合い


 ‥スポーツ詠みっすな。
 身長負けしていてもヘディングに行ったと。そんな感じらしいですな。

 ここでの「初御空」は、「初試合」の向きですが、まぁ許容の範囲でしょう。


> でも、どうして「の」になった??


 「気負う」って行っても、中途のプレイで、そこの駆け引きが
 試合の勝敗に絡むかどうかは結果論だし、「の」では、気負いすぎだろうと思う。

 ‥ここは自信なくとも、流れと踏んで、ヘディングで行ってみたぐらいで


> まぁ主観で詠むか、客観で詠んでるかの差なんだろうけどさ
> スポーツ詠みの基本は、主観でなんぼでーす!



1-6)3

|「鬼は外」鬼も加齢出て行かぬ      磐田市二之宮
|「鬼は外」鬼も加齢出て来ねえ      手直し



 ‥はてさて、「何が鬼なのか?」
 新聞の評にあるように、行事に出て行かない向きの詠みなら
 「出て来ねえ」が本質です。でないとよく分かりません。

 そうでないのなら

 ここでの「鬼は外」の意は、行事としての意では無く、厄払いの意の方が大きくなりますが
 「鬼も加齢か」とあるので、やはり「鬼がやって来ない」の意になりそうです。

 鬼に代役が得られない近所での行事事情を詠んだと云うことになります。


|「鬼は外」鬼も加齢か出て来ねえ 内なる鬼のおろおろとして
|「福は内」福も格差か現れね 外から来ると思う間違い




|石段や梅の香り一歩二歩         伊豆市貴僧坊

|石段や梅の香り一歩二歩 乗せられ歩けば春遠かれ
|春の距離保てとばかり梅の香 其は梅なり春を知らすのみ


 ‥「梅の香りの」と「の」では、どちらが近づいているのかが不明慮です。
 ここは、「梅の香りへ」と「へ」を盛らないと光景がハッキリしません。
 ある程度解れば良いとか、そういう話でもありませんから、キッチリさせましょう。


> ‥庭園への石段を上り下りしてまでわざわざ梅を楽しもうとは
> 目の前に春が広がってあるというのに、どうにも、わざわざ遠くにあるように楽しむんだなあ


 ‥梅の花がどうしてあのように香るのかを分かって居るのかね?
 ‥それは、春が来たことを知らせるためで、わざわざ見においでと急かしているわけではない
 ‥来てもらっても、一人二人と枝を折っていくのがお約束で
 ‥梅からしてみれば、梅とて、そんなのは願い下げだろうよ
 (良いかい、梅を折らずとも、花が咲き匂いが放たれれば、そこに春はもう来たのだよ)



1-6)4

|すれ違ふとき傘と傘とを両側に傾け合ひてこぼし合ふ雪   伊豆の国市長岡

|すれ違い傘と傘とで威嚇して こぼしつ灰のこぼれても尚


 ‥さてさて、詩情としては、サッパリです。
 だからそれが何なの??
 そりゃまぁ、雪かきも大変っすから、端に寄せておくのがお互い様という事に成りますが
 それだけの話です。「だから何なの??」

 大体ネタの句の光景は、雪が止んでる時の様子でしょう。

 土砂降りにも降っていては、そこまでやらないと思います。
 そこの所の違いも注意して詠まないと、
 ‥自分が何に着目しようとしたのかが、疎かになってしまうというものです。

 ちなみに、「両側に」と盛るなら、そこは「両脇に」「両端に」の方がわかりやすいかと。


> ‥引っ張りの「傘」は、核の傘です。「灰」は無論、死の灰です。
> (視点を変えたら斯様に詠めたと)




|ポケットの拳頼っている孤独        島田市河原

|ポケットに拳握らす消費税 搾取の手本あるじは誰ぞ


 ‥「ポケットの拳」×「孤独」
 ストリートファイトを連想しますが、他には何も書かれていないのでさっぱりです。

 「孤独」ほど曖昧な表現もありませんので、
 「孤独」と盛れば意味が通るだろうなどと、思い込みも過ぎるというものです。


> ‥しかもその孤独たる状況にせよ、如何に説明しようとも、個人差も甚だしいのです。


 俳句や川柳で盛ろうなら、それこそ想定内での扱いです。
 で、詠み手がその解釈にハマろうなら、何もかもがワンパターンにしか解釈されないのです。

 ‥例えば、孤独の人だから詩人なんだろうとか
 ‥詩情を馬鹿にするにも程がある!


> 引っ張りは、二箇所で字余りですが、それで整っていると思います。


 「搾取の手本のあるじ」‥そりゃ日本で云ったら、あの御仁に相当するでしょう。
 これはそういう話です。
 ‥もっとも、元首を誰とするかでも、随分と解釈が変わる話でも有りますな。


> 民主社会に元首を求めること自体が、偏見でーす
> 民主社会にあるべき統治は、ただの責任者でーす
> ‥それ以上の価値を昔ながらに盛りたいと思っていることがそもそもの勘違いかと


 選挙で選んで、任期はそれこそ数年間程度で指導者でしたとか
 ほんと目くそ鼻くその扱いだろうが!

 本当に指導者として期待するなら、任期に限度なんて設けるべからずで

 それこそいつでも国民審査で蹴落とせる制度にしとけってな。

 (憲法にも‥ある程度変えて良い部分とまったく駄目の部分とを分けりゃ良いんだよ)
 (そうじゃないから‥変えられると言うことで、支配目的にすり替えられちまうわけさ)
 (その手の誤解を避けるためにも、恒久的に変えては駄目の箇所をハッキリさせれば良い)



1-6)5

|屋久鹿はもの言ひたげに首傾げ我らの側をゆらり歩めり   静岡市駿河区敷地

|屋久鹿のもの言いたげに首傾ぐ 餌付けされてか逃げもせず寄り


 ‥状況が覚束ないところではありますが
 意見なり判断を示す気がないような詠みなんざ糞です。


> だからあなたは、それの様子をどう判断したのかを示そうとしないのでは
> そこから先の上達なんて、これっぽっちも訪れないと思います。


 「‥たかが鹿だろうとか、侮ってやしませんか?」




|胸の中木が折れる音枯れる音        焼津市石津向町

|胸の内‥気が折れる音枯れる音 受煙地獄ぞこの社会


 ‥ええまぁ、ネタの句を如何様に解釈するかですが
 幾分すっきりしとりませんが、言葉の盛り方がおもしろいことは確かです。


> ちなみに、引っ張りの「気」とは、やる気とかその気とかそういう感じです。


 それにしても、東京オリンピックをネタに、禁煙動向が加速しだしておりますが
 オリンピックが東京に決まらなかったら‥どうだったのだろうかを考えると
 ‥流れはどうあれ、俺的には、とりあえずオリンピック様様っすね。



1-6)6

八十路坂実家も友も遠くなり        焼津市・川柳かわくさ

|八十路坂実家も友も遠くなり 浦島思う差も有らじかな


 ‥八十路で実家とか
 ‥「遠く」もクソも無いと思うのですが、人の寿命からすれば、生き残ってる方が実家かと。

 その辺の世間感覚がまったく不明です。
 百歳が当たり前になり出したら、どう詠むつもりなんでしょうかね。
 (それはそれで楽しみっすな)




|次々と階段出でて迷う足エスカレーター老いに冷たし    静岡市葵区川合

|迷うかなエスカレーター老いに敵 足のすくんでサポートよろしく


 ‥なるほどなるほど、エスカレータにもAIを搭載させて
 乗る人の年齢や混みようをカメラで確認して、作動スピードをインバーターで調節せよと。

 エスカレーターのレベルで、インバーターって可能なんすかね??

 それが可能なら、さっさと改善しちまった方が良いという話ですよ是は!



> うた詠みおわります、ありがとうございました。
posted by 木田舎滝ゆる里 at 22:07 | Comment(0) | 名句にポン/2017前半 | 更新情報をチェックする
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