2017年09月01日

【勝手句帳】141 29-8-25/8-26/8-29 静岡新聞掲載分から

↓7)向宜詠吟.2017/09/01

|二百六十四万の御霊蝉の穴       富士宮市・湧本部句会(8-25)

|二百六十四万の御霊蝉の穴 是空のごと飛翔


> 靖国の裏手で面白いモノを見つけました
> それはもう、ものすごい数の蝉の穴がボコボコに広がっていたんです
> ‥これはもう一句詠むっきゃありませんよね‥(う‥む‥☆★)




リトルボーイ閃光一瞬生き地獄     静岡市・新俳句人連盟静岡県支部茶の花静岡句会(8-26)

|リトルボーイ閃光一瞬生き地獄 マッハの熱にめくられき


> ナガサキに落とされた原爆はな、リトルボーイと言ってな
> ヒロシマ型のビッグジョンとはまた違った実験的な兵器に仕上がっていたという
> 爆発するときの熱風(衝撃波)が、効果的にナガサキの窪地を襲い破壊するように
> ‥破裂するときの高度からして、計画的じゃったんじゃ‥
> あやつら始めから、人の命を何とも思っておらんかった良い証拠じゃな
> 当時の軍事教育の中でもブレとらんかったのは、鬼畜米英だけじゃよ
> ‥より正確には、奥の深い話があるんじゃけどな‥


 ‥八月三十日に、谷口稜曄さんが逝去(せいきょ)されました
 (長崎での被爆だったそうで‥勘違いしてました)



1-7)1

|炎昼や黙して墓並び立つ       焼津市・大富公民館みずほ句会(8-26)

|炎昼や黙して墓並び立つ 挨拶だけの無常林


> 「死人に口なし」‥こればかりはどうにもならぬ
> 無言が苦手な若者が、檀家なんて風習から離れて行くのも道理よの
> それでなくとも、無言が立ち並ぶ墓の様はどことなく無常を語る林よの
> 夏の暑さがあればこそそれも風情にたるだろうに
> それが、冬ならどうかね‥考えてみたことはあるかい?



1-7)2

風が線路を駆ける無人駅       静岡市・葵句会(8-26)

風とて一休みかな無人駅 ジリジリ迫る暇のうだるさ


> 旅先での無人駅、帰郷しての久しぶりの無人駅
> おもむき新鮮だけど、こう暑いのに風までお休みでは
> どうやって次の列車が来るまでの暇を潰せば良いのやら‥
> ‥これじゃ、ただの我慢大会だよ‥




ホームまで伸びる夏草無人駅      掛川市・草の実俳句会(8-29)

|駅ホーム伸びる夏草夢の跡 線路は続けど人は居着かず


> 線路も道路も繋がりだすと夢膨らむものだが
> どうにも繋がるほどに人が出て行くのも相場になる
> それだけに、草ボウボウの駅のホームなんて、まさに現代版の夢の跡さね



1-7)3

秒針のひびく静けさ天の川       富士宮市・湧本部句会(8-25)

病身を厭う静けさ天の川 悶え苦しむ終の果てかも


 *厭う(いとう)

> 今宵は何故か体調がすこぶる良かった
> 同じく天気も良く、お陰で、たゆたゆとした天の川を目にできた
> ‥だがしかし‥
> どうにも見ている内に、これが闘病の終の果てに見えてしまい‥ちょっぴり複雑になったよ




|独り居の無音の世界天の川       富士宮市・富士宮早蕨句会(8-29)

|独り居の久遠の世界天の川 創造神を天窓から見


> 今宵は天窓から天の川がよく見える
> 独り居になってからのたのしみと言ったらこれに尽きるな
> ‥天窓から覗いていると
> 創造神の孤独のなぐさみにも、おごりにも、夢幻のままの趣が感じられてくる
> ‥そりゃそうだろう‥
> 思ったままが具象化する事象を逆さに捉えれば、如何様にも見えるも真と言うことだからね
> まさに私という視点が、孤独の退屈しのぎをそこに反映させるばかりだろうよ
> 創造神の見方があるにせよ、私の視界もその一つと言うことで、なんら臆する必要など無い
> (久遠を垣間見ていることに、変わりはないのだ)



1-7)4

|砂動きただそれっきり蟻地獄      静岡市・満点句会(8-25)

|砂動きただそれっきり蟻地獄 我慢は無理と蟻ぞ生け贄


> ‥蟻地獄の観察を始めると、どうにももどかしい所がある
> それでついつい、蟻を捕まえて、蟻地獄に落とすのだ
> それでどうなるかっていう観察を平気でし始めるものだよ


 ‥随分と悪魔な自分を観察してしまうわけだけど
 本質的な言い方をすれば、自分の好奇心を優先してしれっとしているだけである
 それは誰しもに言える事だけど、それに甘んじて、しれっとするばかりなら
 真に悪魔的って判断になるのだろう

 ‥ところが、別の意味での発見をすることにもなる

 蟻地獄の主が満腹だと何も起こらず
 蟻にしても、運が良ければ逃げ出せるのだ
 貪ってみせようと、取りこぼしが起こるのが自然界でもある

 ‥ならどうか
 抜け出せないほどの地獄があるとしたら
 それこそ意図的に操作されて、管理下に据えおかれちまっているってことだよ
 もしくは、満たされぬ欲(感情)にシンクロしちまっているかのどちらかだ
 そうでないと、抜け出せないという事象の説明が、哲学的に釣り合わないという話さ




鉢植えの朝顔50元気満つ      掛川市・草の実俳句会(8-29)

|朝顔の五十ほど元気満つ 世話のし甲斐や暑も涼し


> 朝顔を育てるにしても、指で数えられる程度の鉢の数じゃまだまだだよ
> どうしたって、夏の朝に朝顔を見て涼しさを得られるぐらいでないと
> 世話するテンションも上がらないからね
> ‥そう思ったら、いつの間にか鉢の数が五十になってたよ



1-7)5

|足場組む鳶が炎暑を駆け上がる     静岡市・満点句会(8-25)

|足場組む鳶が炎暑を駆け上がり デッカい仕事 夢追う汗ぞ


> 鳶職を下っ端から始めて、今や、そこそこの現場を任されるようになった
> 炎暑の中の足場を、駆け上がるのが俺の自慢よ
> この汗がどうにも、ますますのデッカい仕事を夢見させる
> ‥まぁ、そこまで張り切ろうにも、まずは現場がないことには始まらないけどな




|人間の努力原点格差なり        浜松市・浜松川柳クラブ(8-25)

|頑張れど格差もあらぁな夏出水 穴を塞げど橋を架くれど


> ‥自然の猛威というのは
> 人間の暮らしなどお構いなしの所がある
> それゆえ、予知できない人間の方が愚かにも見える
> そんなこんなで、目の前のことだけに集中していても足を掬われかねない
> それは、どんなに自助努力に穴を塞いでみようと
> 助け合いの橋を架けてみようと、あるべき格差に寄り戻すかのようにやって来る
> 今時の夏の水害はまさにそれで、汗する身の振り方にも悩ましい限りさね



1-7)6

|踏む大地闇の底から蝦蟇鳴けり     静岡市・葵句会(8-26)

|蝦蟇の声 闇の淵より天下説く 懐事情のあれやそれ


 *蝦蟇(がま)

> 財布の口を開けると、蝦蟇が鳴き出す
> 夏の闇の淵から天下云々を言い始めるのだ
> 悲鳴なのか、よろこびなのか、今ひとつわかりにくいその響きに
> ついつい財布の紐も固くなる‥もとい、がま口財布は益々以て呑み込んだままだ




耐えきれず青柿ひとつ道の上      静岡市・サロン川柳句会(8-29)

|こころざし堕つる青柿つらよごし 汚職の度合い世の程度


> 柿という奴は赤く実ってこそだが
> たまに青いままに道に落ちていたりする
> もの儚いと思うも、柿の木にも都合があるのだろう
> 人の暮らしぶりにしても、そこはあまり変わらない
> ‥でもどうだ‥
> 汚職という奴は、それこそそんな事情の都合なんて知ったこっちゃないって話さ
> その知ったこっちゃない事柄が日常茶飯事では、世間の志を疑っちまうってことよ
> それだけ世間の程度が低かったって次第だからな
> テメエの面だけが汚れていくってわけにない点を、もっとわきまえるべきに思うよ



1-7)7

|芒原大蛇のごとく風奔る        富士宮市・富士宮早蕨句会(8-29)

|芒原大蛇のごとく風奔る 帰れぬ故郷想い馳せ


> 戦に天災が重なっては、庶民にあろうと、故郷を離れざるを得ない
> それで‥異国の地に骨を埋めねばならないとも成れば
> どうにも、秋暮れともなれば、強風吹きすさぶすすき原の光景に
> 大蛇に姿を変えてでも帰り着きたいと思うものだが
> もはや、如何様に想いを強く保とうにもどうにもならないことがある
> そう思えば思うほどに、帰りたいと想う気持ちだけが芒原に乗り移ったかのようだなぁ




|星月夜三保の松原風に鳴る       富士宮市・富士宮早蕨句会(8-29)

|星月夜三保の松原風に泣く 羽衣探す天女偲ばる


> ‥三保の松原に星月夜が見えている
> 実に見映えよろしい次第だが、伝説を思い起こせば物悲しい話よ
> 帰りたいのに帰れないとの涙が、風に乗って聞こえてくるようだなぁ




> うた詠み終わります、ありがとうございました。
posted by 木田舎滝ゆる里 at 16:29 | Comment(0) | 名句にポン/2017後半 | 更新情報をチェックする
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