【勝手句帳】142 8-29（読者文芸選）静岡新聞掲載分から

↓6)向宜詠吟.2017/09/04

｜関西のみやげにカール一つ添え　　　　　　　　　　　　　　　　静岡県葵区北安東

｜関西のみやげにカール一つ添え 「カレー味は永遠に不滅です」

＞　ついに、カールが関西みやげになる時代に突入した
＞　しかし、それでもカレー味は生産から引退するらしい
＞　「カールのカレー味は永遠に不滅です」

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｜投函の音吸い込みし朝雲　　　　　　　　　　　　　　　　　　　焼津市中根

｜投函の音吸い込みき蝉の声 さわげる胸の後押すような

＞　ラジオの投稿ハガキを投函したと同時に蝉が鳴きだした
＞　これはひょっとするとひょっとするぞ‥などと
＞　投稿した気持ちが益々膨らんだよ

1-6)1

｜炎昼や一斉に止むプレス音　　　　　　　　　　　　　　　　　　浜松市東区常光町

｜炎昼や一斉に止むプレス音 町工場にカップ麺の香

＞　「ふっ、くそ暑い」‥やれやれ、メシの時間だ
＞　プレス音が一斉に鳴り静まるのは、腹の虫との交代というわけだ
＞　それにしても、毎日カップ麺だけの奴は大丈夫なのか？
＞　ここでも毎日のように漂っている‥（もはや風物詩だけどな）

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｜涼しさや望遠鏡の奥土星　　　　　　　　　　　　　　　　　　　袋井市浅羽

｜涼しさや望遠鏡の奥土星 そのリングに嵐はありしか

＞　土星の環を観察すればするほど、天文の初歩としてロマンをくすぐられるモノもない
＞　‥その環は見るからに静かそうだけど‥
＞　地球でさえスペースデブリで騒ぐんだから、日々、嵐が巻き起こっていて当然だろう
＞　でも、そんな風にはとても想像しがたいのも見た目の印象だよ
＞　望遠鏡の感度がそれらを観察できる程だったら、宇宙に対する考え方も随分と変わるだろうね
＞　（とりあえず、日々嵐に見舞われているほどなら、宇宙旅行はそそらないって事に成りそうだな）

1-6)2

｜傍らに妻のありけり蛍の夜　　　　　　　　　　　　　　　　　　富士宮市泉町

｜傍らに妻のありけり蛍沿い 阿吽は如何に惹き合う今宵

＞　‥妻と蛍を見に散歩に出かけた
＞　田んぼの広がる道辺から蛍が照り舞うのは
＞　こっちまで蛍の明滅を意識してしまうものだが
＞　さてさて、今宵の塩梅はどうだろうね

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｜新設の介護施設や燕の巣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　藤枝市高洲

｜人目付くさりげなさに燕の巣 人恋しさやアイドル稼業

＞　‥燕が廃墟に巣を構えているのを聞いたことがない
＞　他の野鳥は人目を避けるのに、燕だけが人なつこく寄り添う選択をするという事か‥
＞　まるで、目立ちたがり屋の寂しがり屋のアイドル稼業そのものだな

1-6)3

｜野紺菊の下を流るる水掬い疎開の朝の顔を洗いぬ　　　　　　　　浜松市中区佐藤

｜野紺菊脳裏に浮かぶ朝の川 顔を洗いし疎開の記憶

＊野紺菊（のこんぎく）

＞　今や当時の友達も残り数少なくなり、自分も老いと向き合う齢（よわい）だが
＞　どうにも、未だに、疎開先での朝の光景だけがクッキリと思い出される
＞　それも、朝に顔を洗う為に、同級生とそろって川に出掛けにいくのだが
＞　その川に咲いていた朝の野紺菊がとにかく印象に残っている
＞　‥友達の顔の方が、どちらかというと二の次なんだよね（ちょっと不思議）

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｜八百屋など無き村に住む老い我れは杖を頼りに野菜育てる　　　　松崎町岩科中村

｜八百屋など無き里に住むおらが老い 杖を頼りに畑と向き合う

　＊畑（はた）

＞　おらが住む松崎町のとある地区には、コンビニどころか八百屋もねえ
＞　畑だけが頼りだ
＞　自分の気力と体力だけが頼りだ
＞　杖をつくようになっても、ここを離れる気なんてねぇ
＞　故郷に生きるってのは、そういうものだでな

1-6)4

｜傘の花咲き乱れたる交差点青の合図でいっせいに散る　　　　　　富士市今泉

｜傘の花咲き乱れたる交差点青の合図は風の吹くごと

＞　ビルの上階から見下ろして見える小雨降る交差点の光景は
＞　信号待ちの人が多くなるほど花が咲いたように見えるし
＞　歩道の信号が青になる度に、花が風に吹かれて散りゆくようでもあるなぁ

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｜木の枝に農夫の吊すラジオよりラップのリズム空にながるる　　　　静岡市葵区研屋町

｜夏めくや鍬振る横のラジオからラップのリズム空に流るる

＞　儂は農作業の片脇にラジオが欠かせない
＞　夏めいてくる時分にラップが流れてくると、超ごきげんになる
＞　「え？」‥CDをかければいいじゃんかって？
＞　馬鹿こくでねぇ、農作業の大事はまずは天気よってな、ラップが中心ではないんじゃよ

1-6)5

｜奇声また怒声のあまた飛び交ひて我が病棟は救われ難し　　　　　吉田町住吉

｜奇声また怒声のあまた飛び交いて国会審議ぞ救われ難し

＞　まったく、国会の中継にしても
＞　奇声だ怒声だと、どこぞの病棟と大して変わらんな
＞　なにが‥まっとうで正常かに、然したる差なんてこれっぽちもあるまい
＞　救われがたいとは、まさに、こういう事を指して言うんじゃろうな

｜常日頃テロにミサイル飛び交いて世界の平和救われ難し

＞　ほれ、もう少し拡大してもそうだ
＞　世界規模でも、テロだミサイルだとキチガイ三昧よ
＞　まったく以て、世界平和どころの話では無い
＞　どこにも、おかしな輩が雑じっているのが世間の本質と言うことよの

｜防衛ファースト最優先国民ファースト救われ難し

＞　お陰で、あるべき国民第一が
＞　ことごとく防衛第一にすり替えられておる
＞　しかしまぁ自由第一では無い、安全第一じゃよ
＞　そこが分からないようじゃ、救われようもあるまいて

｜常日頃自分ファースト飛び交いて孤独ぞ増える救われ難し

＞　見てみい、自分第一でさえ、安全よりもまずはわくわく第一じゃ
＞　お陰で、安全というシェアから逸脱して、孤立している不自由に気がつかず鈍くなっておろう
＞　馬鹿も自由も大概にすべきだな、そうでないからキチガイが図に乗ることにもなる
＞　まったく以て斯様な有り様でも希望を保てとか、救われようが無い連中の戯言じゃて


　‥皆で手を組まんところに希望なんてねぇ
　組むのが嫌なら、始めから希望なんて望むなッ

1-6)6

｜ミサイルへ互いに乗せる赤い舌　　　　　　　　　　　　　　　　選者吟（川柳）

｜核の傘互いの根っこあかんべい 戦争ファースト腹に据え

＞　‥核の傘がどうして必要かというと
＞　その性根に据えられてあるのが、万民にあかんべいで、戦争ファーストだって事だな
＞　他に何があるよ、そうだろうがッ




＞　うた詠み終わります、ありがとうございました。