2017年11月10日

【勝手句帳】162 29-11-3/11-4/11-7 其の1静岡新聞掲載分から

↓6)向宜詠吟.2017/11/10

|曼珠沙華燃ゆる戦国砦跡          静岡市・葵句会(11-3)

石垣やつわもの散りし曼珠沙華 歴史の垣ぞ武士冥利


 *冥利(みょうり)

> ‥石垣をバックに曼珠沙華が咲いておった
> 武士の生き様というは、まさにこれよ
> パッと咲かせてあとはよろしくと、語り続けられたい連中ばかりよ
> ‥日の本の歴史は‥
> どうにもそんな連中の凸凹とした石垣で成り立っているんだからなぁ
> 知れば知るほど‥呆れもするし、好きにもなるし、不思議だよ




|遺句集の広き行間虫時雨          SBS学苑パルシェ教室俳句(11-7)

|遺句集の広き行間秋の声 辿ってみたき詠み人の跡


> 誰の句集だろうと、気になり出すと訪ねて見たくなる
> それが丁度、秋という巡り合わせともなると尚更だ
> ‥対象が故人なら‥
> 句集の行間すらいとおしく思えるものだからな



1-6)1

|黄昏れて川面に揺るる芒かな        裾野市・寿大学俳句教室(11-3)

|黄昏やけふもさらばと芒かな 人の一日石垣の如


 *如し(ごとし)

> ‥黄昏に芒が揺れている(まるでサヨナラの手の振りだ)
> 人の一日とは、石垣の積み重ねに相違ない
> ゆえに、芒のような姿形も諭しに添えてあるのだろう
> ‥なるほど‥
> ならば、己に侮りの石垣だけは積み上げたくないのう




|荒れ畑に突と一本曼珠沙華         裾野市・寿大学俳句教室(11-3)

|荒れ畑に突と一本曼珠沙華 期待をするなあれも一時


> おや、耕作放棄の荒れ畑に曼珠沙華が覗いておる‥(昼間はたしか無かったな)
> まるで、少しばかりその気になった若者に似て居るのう
> 少しばかり夢見がちに成っても、負担が予想外だと知るや途端に投げだす始末にそっくりだ
> ‥なにしろすぐに散るのだからな(なにもそげな真ん中で咲かんでも良かろうに)



1-6)2

|遺跡野の古びし田下駄秋のこゑ       SBS学苑パルシェ教室俳句(11-7)

|遺跡野の古びし田下駄秋の ただの日常 時の経つ程


> ‥遺跡で発掘されたものに田下駄があった
> さぞやたいへんな農作業だったに違いない
> そう思うとほっぽり出すのが日常なのに
> どうしてだろうな、そんな難儀の時代観ほど、ロマンを感じざるには居られないのだ
> ‥変な話だよ‥
> 時の隔たりが、日々日頃のどんな嫌なことでもロマンに変えてしまうような話だからな
> (苦労されたことほど、懐かしさとして、遺伝子が反応するのかもなぁ)


 ‥一方で、だらしなさやインチキの体たらくには怒りを思うほどだし
 ‥否、貴族・商人・盗賊風情なら逆かもな
 ‥金銀細工美術品と、はしゃぐのが相場で、ただの板きれなんかスルーだろう




|「年輪」の菓子で祝はる敬老日       SBS学苑パルシェ教室俳句(11-7)

|「年輪」の菓子で祝う冬に紀寿 しあわせなんて所詮気分


 *紀寿(きじゅ)‥百歳。

> ‥ケーキにローソクを飾るのも火事になりそうな歳じゃし
> バームクーヘンの重なりを年輪に見立てて、百歳を祝ってみたよ
> まぁ、幸せなんて所詮気分じゃからね、誰かの心遣いこそが本質じゃて
> 心遣いに包まれていたかったら、自らが進んで発揮することじゃな
> 要求した内容を手に入れて幸せとか‥甲斐性無しのどうしようも無さじゃて‥



1-6)3

汗の巨躯バスの座席にドンと投げ冷房口を集める男          静岡市・しおん短歌会(11-4)

|汗の巨躯バスの座席にドンと投げ 「クーラーの勝ち」と横綱も言う


> 汗に湯気立った相撲取りらが、次つぎバスに乗り込んでいった
> 横綱が言った「クーラーキンキンで、超気持ちいい〜」
> 誰もがドン、ドンと
> クーラーにうっちゃられたように、座席に身を投げもたれておった




|秋天を透き身罷りし母の         静岡市・葵句会(11-3)

|秋天やおめでた顔の妻の声 実感湧かね男無精


 *身罷る(みまかる)‥死ぬ。死去する。

> ‥この秋空の下、耳にしたのが「おめでた」との妻からの言葉だった
> なんだかすげー嬉しそうな顔だったが、どうにも実感が湧かなくていけねーや



1-6)4

さはやかに花押の筆のるるりりと      SBS学苑パルシェ教室俳句(11-7)

|秋笑う花押の筆のるるりりと 仕上げて出向く秋秋秋秋


 *花押(かおう)

> 「くほほ」‥さてと、あとはこれにサインを入れて仕上がりと
> それじゃ、秋を堪能しに行くとしますかね
> (こんなに良い秋日和に、仕事で部屋に座してなんか居られるかい)




|居間の灯を消して夜なべの灯を点す     SBS学苑パルシェ教室俳句(11-7)

|居間の灯を消して夜なべの灯を点す 冬の仕度が本筋だけど


> ‥秋を堪能して帰ってきたら仕事が入っとったわ
> 「たく‥」仕方がないので夜なべをしよう
> 居間の明かりを落として仕事部屋の灯りを灯したら、ふと気がついた
> 本来なら、秋の散策も、秋にする夜なべも‥そもそもは冬仕度が基本だよ
> (今の時代はすっかり、そんなの関係ねぇ‥だなぁ)



1-6)5

|コスモスやけふも不在の駐在所       静岡市・葵句会(11-3)

|コスモスやけふも不在の山の神 のんびりもまた神無月やも


> 「おや?」山の神様、今日も不在じゃて
> コスモスが綺麗で、代わりに留守番してるみたいじゃのう
> こんなにのんびりなのも、神無月だからかのう(いつ頃のお帰りになるのやら)



1-6)6

今朝秋や包丁の音かろやかに        沼津市・裸子駿河句会(11-7)

さわやかや包丁の音かろやかに 味噌汁の香に仕上げを通す


 *今朝秋(さわやか)‥という読ませ方も有りかもね。

 綺羅ネームで言えば、今朝秋子(さわやかこ)‥それは(けさのあきこ)
 ‥ということで、今朝秋姫(さわやかひめ)→(さわやかこ)あたりか‥
 ‥「あれ?」これじゃ米の銘柄じゃねぇかよ(ぜってぇに食べてみたくなる余韻)


> 味噌汁を仕上げるには、秋の朝が丁度良い
> 少しひんやりとして、温まれる感じで、しかも香りの伝わりが良い
> ‥空気が澄んでくると、包丁のノリも軽くなるものなんだなぁ




|秋夕焼無心にたたくモロヘイヤ       裾野市・寿大学俳句教室(11-3)

|秋夕焼無心にたたくモロヘイヤ 景色の映えて仕度ぞ主役


> ‥モロヘイヤをひたすらに叩いての下ごしらえなんて、単純作業の何物でもない
> そう思っていたら、キッチンからの秋の夕焼けが見事だったよ
> なるほど、台所からとて景観が良ければ
> 面倒くさそうな下ごしらえだろうと、その作業工程のすべてが主役に見えて来るなぁ
> (やはり、台所といえど、景観の演出は欠かせないと言うことだね)




> うた詠み終わります、ありがとうございました。
posted by 木田舎滝ゆる里 at 20:17 | Comment(0) | 名句にポン/2017後半 | 更新情報をチェックする
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