2017年12月03日

【勝手句帳】171 29-11-28 其の2静岡新聞掲載分から

↓6)向宜詠吟.2017/12/03

|見はるかす視野の限り秋桜富士高原の空の青さよ       沼津市大岡

|富士高原視野を限るな秋桜 この世の果てまで晴るかせよ


 *秋桜(あきざくら)‥コスモスの花、その和名。
 *見晴るかす(みはるかす)‥はるかに遠くを見渡す。見はらす。
 *晴るかす(はるかす)‥晴れるようにする。はらす。


> 富士高原の秋桜が見渡す限りに広がっている
> 秋晴れにじつに素晴らしいお花畑だよ
> ‥しかしまだまだだ‥
> これほどであるのならば、地球を覆い尽くしての見晴えで見てみたい
> (そんな妄想にも浸っちゃうよなぁ)




コスモスの迷路賑わい風そよぐ       掛川市・草の実俳句会

|幸せは迷路の如しコスモスら 咲き乱れては道塞ぐなり


> ‥おやおや、見事に咲き乱れては、足の踏み場も無い
> 皆で好き勝手に、幸福を追求してみたところで、この有り様よ
> これのどこが幸せの状態なの?

 「幸せを探すことが幸せ‥」そう言わんばかりだな

> ‥コスモスらの咲きっぷりは、じつにそこを思わせる
> そういうのを「押しつぶされそうな程の死合わせ」って言うのだろう
> ほとほとに、マゾ気の風情ということだろうね



1-6)1

平凡に飼いならされている自由        島田市河原

|平凡に飼いならされて愛などと どこにでもある行き詰まり感


> ‥I love you, I need you.などと
> 愛の告白を日々の最幸としている文化はどこか怪しい

> 太平洋戦争当時の日米兵を比べたってな
> 横文字の奴らの方がへたれが多かったと聞くよ

> ‥人の生き様は様々だ
> お互いの勝手な要望の果てに、人間らしさを手放して請け負わざるを得ない状況もある
> 「愛」などとピンクに看板を立てても、大抵は無理な注文を突きつけてくるばかりだよ
> ピンクの気分で、どこまで頑張れるってんだい、遊んじゃうだろうが!

 (油断にも大好き惚けていては、その人からの魅力を‥あっと言うまにすり減らすだろうよ)

> ‥そんなこんなで行き詰まるのもまた愛
> 「愛」には、今を最盛に追い込むほどの生命力は有っても
> 追い込まれてからの再生をもたらすまでの飴までは無い‥鞭が有るばかりだよ


 ‥だから、その手の平凡の愛に嫌気がさして
 ただ黙して見守る姿に「真の愛」を見いだしたとしても
 それって‥イチャイチャしたいラブ感とは、大違いだからな
 ‥単に甘い夢に浸りたいだけのうちは
 わがまま勝手な破局もつきまとう平凡のままだって自覚しとけや


|モテないのでは無い、すでに真の愛を選んでいるだけである





早朝の鵙の猛りや検診日           浜松市北区本沢合

|今朝の百舌 旦那のボケに女房切れ 冬の足音つまびらかに来


 *モズ(百舌、鵙)、来(く)

> 朝っぱらからモズの高鳴きが聞こえたよ
> もとい夫婦げんかさ、はっきりと別れる別れないの騒ぎよ
> あの夫婦には、冬が来ているってことだなぁ(‥くわばら、くわばら)



1-6)2

|秋うらら空より来たる麒麟の        吉田町川尻

|秋うらら空よりべろり麒麟ちかっ 餌持つ両手も巻かれそう


> 秋の陽気に誘われて、動物園に行ってみたよ
> キリンの餌やり体験の時、上から伸びてくる舌の長いのにはびっくりしたよ
> 間近で見るとあんなにもサイズがデカいとは‥(腕まで巻き取られるかと思った)




|ああうまい肥料たっぷり喜びて南瓜はごろりと葉陰に太る    牧之原市地頭方

|秋の声ポテチがっつり昭和浴 腐女子のごろり平成に肥ゆ


 *南瓜(かぼちゃ)

> 秋と言えば食欲、食欲と言えばポテチ
> ポテチと言えば、モニターの前でのカウチポテトだな
> ビデオ鑑賞、TVゲーム、マンガと
> まぁ所謂、戦後昭和に培ったオタク文化だな
> ‥無論‥
> それに女子がはまるケースも後を絶たず、其を「腐女子(ふじょし)」と呼び捨てだしたんだと

> ‥当然‥
> メタボガッツリ体系に一直線のはずだが
> 男に見られる醜悪なオタクイメージとは異なり
> なぜか腐女子には大当たりがちらほらしていたりするのだよ

> 天は二物を与えずとは聞くが
> 美人過ぎると、昼の職場に置いてもらえないままの人生だったりするからな
> その手の腐女子が、家に籠もっていたとしても平成としては不思議はない



1-6)3

|流行を三歩遅れて追う老後          焼津市坂本

|流行を三歩遅れて追う老後 一に長生き二に食事


> ‥三四が無くて五に伝承
> 戦後昭和の老人ホーム政策は、米軍による日本文化伝承を切り離す為の陰謀だった
> 実際、人間性を衰退させるばかりの問題だらけだったそうだ
> 寝たきりで病室放置も同じことだった

 年金政策に並んだ試みだったせいもあり

> ‥「老後は何もせずにのんびりと」に描かれていた諸々の餅には
> それこそ何もしない絵図として植え付いていたらしい

> ‥「お前らどれだけ仙人なんだよ?」と怒鳴り散らすまでも無く
> いざ老いてみても、じっとなんてしちゃ居られねぇってのが相場だった
> だが、情報源をTVに委ねるしかない世知辛い街道を歩んできた者たちは
> どうしたってTVに齧り付いたままだったりとする

> TVに降りてくる情報なんて、今や三番茶だからねぇ




|何をしに来たか忘れ鰯雲         沼津市・片浜松風句会

|何をしに来たかを忘れ鰯雲 畑の前で鍬後を案ず


 *鍬後(しゅうご)‥「銃後」を平和的に塗り替えて、仲間の暮らしや家庭を指す意。

> ‥「あんれ」、何しに来たっけな
> 作業途中、畑の前で立ち呆けていると、鰯雲がきれいだった
> 鰯雲が仲間や家族に見え出すと、そちらのことを考え始めていた
> なんの為に頑張ってるかって、そういうことだもんな



1-6)4

|誰もこず名月の開けてあり         静岡市駿河区馬渕

|誰もこず名月の開けてあり 酔うてすっかり縁側の朝


> 山奥の片田舎、近くに他に居ねぇ、誰もこねぇ
> だから、名月の晩は、外を開け放ったままでひとり月見酒よ
> 有明の月まで頑張るつもりだったけど、酔ったきり縁側で朝を迎えちまったようだな




|満月のいつしか昇り海面にムーンロードの清らかに見ゆ     静岡市葵区柳町

|月の道どこかしずしず誘いけり 幻であれいざ麗しき


> ‥今日もしずしずと月が出ておる
> そなたがそしらぬ顔をしながらも、どこか誘っている色気もまた月の道さながらよの
> そんなにも俺を誘いたいのかよ
> そんなにもこの俺が気に入ったのかい
> ‥そこまで言うならあれだな‥
> たとえそれが俺の早合点だろうと、思い込みだろうと、幻だろうと
> この据え膳として見る月の道の向こうにあるだろう麗しきを手に入れてみなくてはなるまいて
> (おお、私の月よ、今宵を共に過ごしませんか?)



1-6)5

|終バスを降りてひとりの星月夜        静岡市葵区上足洗

|終バスを降りてひとりの星月夜 待つ人も無く孤の部屋へ


> ‥ふう、やっと仕事が終わったよ
> 「どこか行きたい」‥でももう遅いし、疲れたし、眠いし
> 終バスをおりて待っていたのは、見上げんばかりの星月夜だった
> 「ああ‥」なんて省略形なんだ、もう終わったよ、どっか行きたかったの
> じゃ、あとはメシ買って帰るだけだな
> やれやれ、今度は人恋しくなって来たよ
> (あ、それじゃ今度は、買い出しで誰かに会う展開かもな)はぁ‥




淋しさが居座りてゐるこの夕べグラスの氷をピシピシ鳴らす   吉田町住吉

|淋しさと居座ってをりおうちバー このグラスにはささやかな誇り


> 今やひとり淋しくおうちで飲むのが精々のなぐさみだよ
> 酒を注ぐこのグラス一つにしたって、昔に頑張って手に入れた思い入れさ
> 頑張ってたよなあの頃は‥(ああ、頑張ってたはずだよ)
> ‥でも‥
> それで残ったのが、ささやかな一杯を保てるかどうかの老後暮らしとはな
> (こんなでも、今の俺を支えるのが、若りし頃の汗だってことに変わりはない、ないんだが‥)



1-6)6

想い出を背負いきれずに向日葵は背中を丸め秋風に立つ     袋井市掛之上

|想い出を背負いきれずも今朝の秋 丸まる背でも向日葵は立つ


> ‥不幸があった次の日、思いもよらぬ秋を発見した
> あんなに大きなヒマワリだって、種を一杯にすれば背が丸まるんだよ
> まるでそれは、一つ一つの想い出の数の重さだよな
> 背負いきれない悲しみだろうと、それで背が丸まったってそれだよ
> それが自然体ってことなんだと気がついたっけ




> うた詠み終わります、ありがとうございました。
posted by 木田舎滝ゆる里 at 20:30 | Comment(0) | 日記/2017 | 更新情報をチェックする
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