2018年06月11日

【勝手句帳】220 30-5-29 其の2静岡新聞掲載分から

↓4)向宜詠吟.2018/06/11

|愚直なる卆寿の峠若葉風           沼津市大岡

|愚直なる卆寿の峠青葉闇 木洩れ日の先 見はるかすらむ


 *卆寿(そつじゅ)‥90歳。

> ‥大それた事をやらかすこともなく地道な人生
> それも今や90に達した
> 未だ体力と健康に恵まれておるが、世間の情勢(年金暮らし)を思うに
> 青葉闇を歩いているような成り行きだ
> この先に木洩れ日はあるだろうか‥
> この先に見はるかす景色はやって来るだろうか‥

 (あると信じて‥この先も見えない峠の向こうに向かって歩いていくのだなぁ)
 (ずっとそうだった‥けれど)



1-4)1

|畑土はふっくら春の顔をして花や野菜の作付けを待つ              富士宮市沼久保
|土塊の畑やわらげ春の雨人も安らぎ雨の降りつぐ                 御前崎市白羽

|春の雨 土をやわらげ畑にハリ ほっと一息 作付けの頃


 *土塊(つちくれ)

> ‥農家にとって、春の雨ほどビッグイベントもない
> 折角に温かくなって作付けしても、雨が降らないことには始まらないのだ
> 夏の旱も大変なことだが、春の渇きの方がショックの大きさは半端ない
> 昔で言えば、冬の蓄えが底を付いている状況だよ
> 今だからそうまでには無いにせよ、春に雨が降ると、それだけでほっとするよ

 (春に作付けが終えてもいないのに雨続きというのもヤキモキだけどな‥)
 (作付けのすぐ後の雨続きだと、もっと心配になるけどな‥)




|何見てもをかしき少女葱坊主         吉田町川尻

|何見てもをかしき少女春の 天道虫に注ぐ静けさ


> ‥おてんばなのか、あの子は畑に来ると好奇心旺盛だな
> さっきからずっとはしゃいでおるのう(春だし)

  「おや?」無駄に静かになっておるのう

> ‥「なーんだ、天道虫かい」
> 虫嫌いの多い昨今、これは期待しても良いんかのう



1-4)2

|車いすにつかずはなれず紋白蝶        島田市中河町

|車椅子押してくれぬに蝶の添う スローの根気しみじみ問われ


> ‥車椅子に慣れずにいると蝶が寄り添ってきた
> 蝶に寄り添われたとて‥何の足しにもなりゃしない‥
> まぁそう思うだけだったが

  その蝶がなかなか去らず、私の車椅子の周りをぐるぐると飛び回っていた

> ‥普通にこちらが走り回れたなら
> サッサとどこかに逃げちまっているだろうに、随分と余裕たっぷりに飛び回っている

  つまりそれは、こちらの諦めきっている空気を読んでのことなのだろうな

> 元気づけてくれてるのだろうか?
> それとも、草木と同じ扱いか?

  ‥どちらにせよ、ふさぎ込んでいては蝶にすら及ばぬのだなぁ




|白椿覚めてさみしき独り言          三島市藤代町

|白椿覚めてさみしき落ちぬ恋 これ程までにうずくうらめし


> ‥儚い恋と思いつつも追い求めずには居られない
> それは、冬に可憐を咲かす白椿のようなひととき
> されど、振り返ってもらえないことがわかろうなら
> これほどに切ないこともない

  ‥否、むしろ‥

> カラダで恋い焦がれていた分だけが、どうしたってうらめしく居座ったままさね



1-4)3

|物言は妻となりけり花見         静岡市清水区長崎

|物言わ妻となりにて花の しばしのしじま横顔ぞ花


 *となりにて(隣にて)

> 花見の時の妻はだんまりが多い(花の観察に集中しているのだ)
> 私はこれ幸いとその横顔の妻を見て楽しんでいる




|筍を掘る夫の背今朝の           浜松市西区神ヶ谷町

|筍を掘る夫の今朝の背 惚れ惚れしちゃう達者ぶり


 *背(せな)

> ‥朝早い内に、夫婦で筍を取りに来た
> 手慣れた夫の筍を掘り当てていく手際に、いつもながら感心しちゃうなぁ



1-4)4

|売り声の著き干物屋みなみ風        掛川市・甘藍・鴟尾の会

|南風寄する売り声ひもの店 放つ威勢に薫る黒潮


> ‥南風吹く港にやって来た
> 当然ながらひもの屋が目立つ
> 店通りを歩けば、売り声の威勢と薫りくる黒潮っぽさがたまらないよなぁ

 (正直言えば、干物より刺身に釣られるよ)
 (でも、刺身屋は胡坐を掻いて呼び込みなんてしねぇし、港通りの空気は常に干物屋と在る)
 (‥ということで「ひもの食え」)




|山の宿まどろみのなか初音かな       静岡市・あけぼの句会

|山の宿まどろむ朝に初音とは 寝息の横に掛け軸の百舌


> 春先に山に来た、折角だし当然泊まりだ
> そんな朝方
> まだまだ夢の中だったように思うが、半分覚めていたような気もするが
> 鶯の声を聞いたよ(今年としては初音だった)

  しかし奇妙だ

> 鳥目なんだし、薄暗い頃からうろついてなんていないだろう
> 良いとこ鴉ぐらいだ、しかもカラスは天敵だ

  寝息のウグイスを訝しく思っていると、見れば横に百舌の掛け軸が掛けてある

> ‥まさか、昔話じゃあるまいし
> 掛け軸のモズがウグイスの真似をして鳴いたとでも‥


 ‥いや待てよ
 昔話のパターンで言えば、掛け軸を頂いて帰るのが僥倖(ぎょうこう)という事になる

 ‥宿に掛け合って、譲って貰い
 鑑定団にて鑑定してもらってから即売却(儲けがでたりして‥)
 柄にもなく飾っておけば、珍客がやって来て‥譲って欲しい展開の縁フラグが立つとか‥
 招き猫よろしく、飾っておけばラッキー運上昇とか‥

 (さてさて、どうしたもんかなぁ)



> うた詠み終わります、ありがとうございました。
posted by 木田舎滝ゆる里 at 20:35 | Comment(0) | 名句にポン/2018前半 | 更新情報をチェックする
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