2019年10月21日

【勝手句帳】r035(01-10-18,19)静岡新聞掲載分から


↓ 14)1 向宜詠吟.2019/10/21

|届かぬと知りつつ背伸び雲の峰
藤枝市・時ヶ谷明句会(10-18)

|届かぬと知りつつ背伸び雲の峰 いきなり!ステーキ「俺十歳」


 ‥駅の立ち食い蕎麦で小学生が一人で注文しようが誰もなんも言わんだろう
 ただ届かない点がどうにも仕方がない

 その点、「いきなり!ステーキ」ならどうだろう‥

 切り分けて貰えれば、立ち食いだろうと多少届かなくても余裕で食えるはず‥
 (椅子席もあるらしいしけど)なんかこう、立ち食いしてみたい年頃の俺十歳


↓ 14)2


|おすそ分けのトマト朝日をしたたらせ
島田市・主流社句会(10-18)

|朝採れのトマト朝餉をしたたらせ 朝日ぞ浮かぶ味噌汁の具


 ‥トマトを味噌汁の具にするのが人気らしい
 しかしどうか、八つ切りで入れるのはどうだろう
 そこは、どう考えたって輪切りでありたい
 なぜなら、トマトを太陽に見立てるべきだからだ

 「味噌汁の中に太陽を!」


↓ 14)3


一升ビンが重くなって俺も晩年というか
島田市・主流社句会(10-18)

|痛風や一升瓶が遠くなり 切断マジか‥失明マジか‥


 ‥なんだか、この頃痛風っぽい
 お陰で、一升瓶から遠くなっちまっている
 両足切断とか、両目失明とか
 そんなん、酒飲めねぇよりツラいじゃん


↓ 14)4


|木の実独楽地球の軋む音がする
島田市・主流社句会(10-18)  *独楽(こま)、軋む(きしむ)

|1ガロン地球の軋む音がする 燃やすほどに遠のく未来


 ‥そもそも毎年どんだけの石油が燃やされているというのだろうか?
 国も世界も積極的には公表する気が無いらしい

 「そんなんで良いのかよ?」

 ‥なんでも人口一人につき、10倍の数の家畜が養われているとか何とか
 その餌だけでかなりの耕作地を必要とするというのもたまげた話だから
 世界中で消費する石油の量だけで、どこかの国の降水量がまかなえる分量だったりしてな

 それでも枯れないって、どんだけ算出してんだよ

 ‥地盤が崩れないというのが逆に不思議でしょうがない
 まるで崩れるのを隠すために、砂漠の国から算出するのがセオリーみたいにも思えるよ

 (偶然にしては、出来すぎた辻褄だもんな)


↓ 14)5


魚になりたいと思った酷暑魚食む
島田市・主流社句会(10-18)

|「原発反対、魚だって酷暑です」海水温の上昇源


 ‥原発を冷やしているのはなんだかんだ海水だ
 直接に使っちゃいないにしても、温まった冷却水の温度を下げるのに使っている事に変わりは無い
 素人だろうと、原発の配置を見れば明らかだ

 その海水温を少しでも下げることが台風の脅威を遠のかせる早道なのに
 この国は、まだまだ原発をやらかす気でいるらしい

 ‥馬鹿なの?、キチガイなの?
 平和利用じゃねぇじゃん、殺戮兵器だろうがッ(いい加減にしろよ)
 結局、不幸との等価交換にしかなってねぇ!!!

 ‥何が産業推進だよ、もはや惨状推進じゃねぇかよ(ふざけんな)


↓ 14)6


|赤蜻蛉B29来ない空ゆっくりと
島田市・主流社句会(10-18)

|赤蜻蛉B29来ぬ空ゆっくりと 焼け野と瓦礫を一巡り


 ‥戦争が終わった、赤蜻蛉をのんびりと眺められる秋を噛みしめている
 でも、なんだかんだと、赤蜻蛉を見て回っているわけではない
 焼け野と瓦礫に、使えるモノは無いか、何か売れるものは無いかを探して歩き回っている

(そんなこんなで、自分らが赤蜻蛉になって、飛び回っている感じなんだろうなあ)


|赤蜻蛉流されて行く橋の影 豪雨の去って戻らぬ昨日


*昨日(機能、帰農)

 ‥橋が崩れている、土手が流されている
 昨日まであった見慣れた光景が、豪雨で一変しちまった

 秋だというのに、蜻蛉はすっかり飛んじゃいない
 実りの秋の楽しめずに、なんて残念な水浸しのまんまだろう


↓ 14)7


|敗戦を母の背中が物語る
島田市・主流社句会(10-18)

|敗戦を背中で語る畑の母 父未だ帰らぬ子沢山


 ‥戦争が終わった
 ほっとするのを知らないかのように、母の姿は常に畑にあった
 今から思えば、父が生きて帰ってくるかもわからない心配で心細かったんだろうなあ
 なにしろ我が家は子沢山の家庭だったからなあ


|被災ざれ泥活せずんば明日は無ぇ 背中で語れ「踏ん張るのみ」を


 ‥こんなん台風が、異常気象で毎年来んのかよ
 やれやれというか‥うんざりというか‥

 「なんの利にもならねぇ泥活ってやつは、どうにもみじめすぎる」

 ‥でもやらんと明日は来ねぇ
 だから踏ん張るだけだ、踏ん張るだけだ
 だけど、踏ん張りきれるかどうかすらわからねぇ
 来年どころか、まだまだ雨降ってるし‥

(お互いに、背中で語り合っている内はまだまだ大丈夫‥と思いたい)


↓ 14)8


路上の影となる炎天下
島田市・主流社句会(10-18)

|炎天に伏す路上の影になり 横断歩道のまだ途中


 ‥さて、シミュレーションをしよう
 横断歩道のまん中で熱中症に倒れた人が居ました
 あなたは一番前で信号待ちをしていてその倒れるさまを車中から見ておりました
 他に通行人はおらず、信号は今にも変わりそうです

 でも、丁度上手いことに、倒れたのはあなたの車の前でした


「さて、その時、取るべき最善の行動は何でしょう?」


 ‥一番の問題は、後続の車がこのことを知らないことです
 未だにこの手の情報を知らせる術が何も備えられていない程度の科学力でーす
 もとい「思いやり」‥なんて残念な乗り物文化なんでしょう


 ‥救急車が来るまで、そのまま車を発進させないことが最善か?
(命を救いたくって、川や海に飛び込むよりはずっと簡単でーす)
(今時、その手の音声案内装置が付いてねぇのは不可解すぎる、特殊ライトでもいい)
(車が事故って路肩に寄せられない状況にしたって、その手の装置はあるべきだが‥)


|路上にて影になりたる原爆の熱線に溶け蒸発す


 ‥ネタの句の「路上の影」の意を汲んで連想すると
 どうにも、倒れた、死んだの見方のどちらかです

 一体どういうつもりで詠んだんでしょうか?


 ‥通常の解釈は、まぁこの夏の暑さの中、倒れちゃったんだろうね‥としか思えない
 若しくは、はねられたのか?、事故ったのか?、見てたのか?
 どっちにしても、なんかこう、格好良さげに詠みきった感が、無茶すぎる‥(まるでわからん)


↓ 14)9


|がんばったただ流されて来ただけだ
伊豆市・川柳ともしび吟社(10-18)

|がんばった流されてきたそれだけだ 人類渦中の忙しさ


 ‥社畜の何が悪い
 頑張って流されてそれだけの何が悪い

 今の世の中、自由競争の保障だけは抜かりないんだから、ハズレを引いちまう事だってある
 それの何が悪い(どう考えたって、それも自由競争だかりゆえの保障の流れだよ)


 (然れども、確かに格好良くはない、それには同意しよう)


 ‥でもそれの何が悪い
 待遇がどうのと騒いだところで、どこも似たり寄ったりだ
 自由競争の保障だけしかされていないも同然なんだから、そんなもんだろうよ
 市場を奪う正義に乗っかるのが当然と思って参加してりゃ、そんなもんだろよ
 商いで戦争やれってんだから、そりゃ攻撃重視にもなる、日本中でそんなもんだろうよ
 上からブラックになりがちなのも競争だかりの光景だよ、世界中でそんなもんだろうよ

 市場のパイは限られている、なのに、政府はその奪い合いの上前を撥ねて持って行っちまうんだ
 まるでみかじめ料だよ、社畜にならずとも国畜さね、人権なんてただの言葉だよ


 ‥悪いというのなら、悪いと言える頭のある奴が、改善を図る術を知らないことに尽きるだろうよ
 (それの一番の代表こそ国会なんだからな、こっちに振るんじゃねぇよ)
 (そいつらの人権の理解が競争ありきなんだからな、常在戦場なんだよ、そういうルールだよ)
 (誰を選んだって、似たように予算で躓くエンドレスなだけじゃんかよ、くだらねぇ)


 ‥言い出しっぺがその程度だから
 人類は競争の行き詰まりの渦中に放り込まれたまんまだよ
 こっちとら猫の手も借りてぇのを沈黙して請け負ってんだよ
 ぐだぐだ言われる筋合いは、1ミリもねぇよ



↓ 14)10


|日の落ちて外は涼しき風あれど部屋には風の入りて来たらず
富士市・富士川短歌会(10-19)

|スマートに別の力のありにけり わが懐に入り来たがらず


 ‥世の中には様々な啓蒙や処世術がある
 その気になってそれらを手当たり次第に学んだつもりでも
 自分の懐の入り具合となるとなぜか違う

 スマートに言って、そこには別の力が在るとしか思えない

 それについては語られることが無いというか、自分で見つけるように勧められているらしい
 だからだろうよ、世の中の啓蒙や処世術にも流行り廃りがあるという事だろうよ

(そこからして枯れてしまったら、それこそ人生の勉強にならないからなあ)


↓ 14)11


|途中からキュウリ曲がって自己主張
伊豆市・川柳ともしび吟社(10-18)

|途中から曲がるキュウリの反抗期 これぞアートとうんこ型


 ‥そもそも生命という奴はだな
 型にハマっちゃいねぇんだよ、野菜だって面白い形をした奴が採れるんだからな

 見ろよこのキュウリ、どうみたって「うんこ」だぜ

 ‥キュウリは真っ直ぐが良いだなんて、まさに食べられるための解釈でしかねぇ
 そんなの反抗されたってしょうがねぇ話さ
 それこそ面白さでもって訴えるしかねぇからな
 オブジェとして飾られっぱにでもなれば、それこそ万々歳なんだよ


↓ 14)12


|ひとりだけ進みすぎても波が立つ
伊豆市・川柳ともしび吟社(10-18)

|ひとりだけ遅れだしても角が立つ 実は画一教育なり
|ひとりだけ進みすぎても角が立つ 師より上など認めぬ空気
|事あれどマニュアル通り角が立つ 目的よりもまず手順
|人権に作法を求め角が立つ 担がせ貢がす封建制


 ‥ネタの句の下五「波が立つ」は、一生懸命考えたって事ですか?
 どう考えたって、日本語としては、「角が立つ」が適当に思われます

 まぁ「角が立つ」にも、使いどころが二通りありまして
 それを嫌ったがゆえの表現の模索ということもあるでしょう

 でもそれにしたって、波が立つでは「使い回せない」って事ですな


↓ 14)13


|風呂敷を広げたままに立つ舞台
伊豆市・川柳ともしび吟社(10-18)

|風呂敷を広げたままに立つ候補 最後の財源やはり税
|税制の無理を論ぜぬ渇財源 褒美がポチいのフラクタル
|頑張れど取り上げらるる被災どき 困ったキワほど付かぬ予算
|公平を論ぜぬ口に突破無し 恵みの水は湧く降るありき


 ‥ネタの「大風呂敷を広げる」の用い方が、間違ってます
 実現するはずもないほらを吹いたり、大げさなことを言ったり、計画したりすること。
 ということになりますと、舞台に立ててるって事は、実現しちゃってるんです

 ‥となると、あとは実力の成り行きと言うことになりますが
 始めっから人気が出ないことを、詠みに織り込んでは、誰の視点から詠んでるんだかさっぱりです

(当人の目標については、どこにも述べられていないんですからね)
(主役を張れないとダメとか、一流の舞台でないとダメとか云々は、表現を知らぬ側の思い込みっす)
(逆に、下手なのに舞台にカネを掛けてる道楽もありますが‥其を野次っても意味が無い‥)


↓ 14)14


|日の落ちての鳴く山幾重
静岡市・寿俳句同好会(10-18)  *蜩(ひぐらし)

|漕ぎ暮れて蜩つづく山幾重 自転車旅の峠の涼


 ‥それにしても、ここの峠沿いのひぐらしには面食らってるよ
 どこまで行ってもひぐらしだ
 ひぐらし尽くしの山、山、山の中だよ
 さっきから一向にお終いになる気配が無い
 まさに自転車旅冥利に尽きるよ

 ‥このまま日の落ちるまで漕いでいたくなる至福が他にあっただろうか?
 夏の夕暮れ時なんて、そりゃまぁ潰れるように寝転がりたいのが旅の毎日だったんだからなあ



> うた詠み終わります、ありがとうございました。



posted by 木田舎滝ゆる里 at 12:46 | Comment(0) | 名句にポン/2019中途から | 更新情報をチェックする
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